小説
女主攻め

「うーん、思ったよりも難しいものだね」
「すまん……」

真田君に謝らせたいわけじゃないのにな。この間の柳君の発案を参考に、真田君から触れないようにしてくっついたりしてみたものの、どうしても途中で真田君の手が私の身体を捉えてしまう。手首は特に握りやすいようでくっきりと鬱血していた。

「ナマエ、俺の手を縛れ」

真田君は意を決したように言い、自分のネクタイを解く。そして両手を揃えて私の方へ突き出した。触れてはいけないのについ触れてしまうから、縛り上げて触れられないようにすれば良いということらしい。
手首痛めたら大問題だよねと思いつつ、いったん真田君のネクタイを受け取る。真田君の手首に軽く回してみたところで、テニス部レギュラーはウェイト入りのリストバンドを付けていることを思い出した。リストバンドの上からならきっと跡も残らないし、あまり動かさなければ痛める心配はなさそうだ。私は「そうしよっか」と言い、真田君を椅子に座らせた。

「よし、しっかりと縛ってくれ」
「リストバンドの上からなら痛くないよね?」
「痛く……そうだな、こうしよう」

あろうことか真田君はリストバンドを外してしまった。置いた際、ボスッとリストバンドとは思えない音がしたがそんなことはどうでも良くて。

「え、真田君だめだよ外しちゃ」
「ナマエはいつも痛い思いをしていただろう?これは譲れんな」

唐突に自罰的になる真田君に困惑したが、真田君は頑なだ。

「うーん……どうしよう、真田君に怪我なんてさせられないよ」
「こんなことでは怪我などせん。安心して縛れば良い」
「…分かった。変な感じだったらすぐ言って?」

縛られたくて仕方ないというと語弊があるかもしれないけど、進展しない私たちの状況を打破できるそうな方法が見つかって試したくて仕方がないようだ。正直あまり乗り気ではないのだけど、真田君の発案を受け入れて彼の素肌を晒した両手首にネクタイを巻き付けることにした。



「ねぇ本当に大丈夫?」
「大丈夫だと言っている。ナマエは気にするな」

どこで仕入れた知識かは不明だが、真田君曰く縛る途中でクロスさせると解けづらくなるらしい。手加減しながら縛ると真田君はもっと強く縛らんかと口を挟むので、もはや容赦なく渾身の力で縛らせてもらった。途中から何だか楽しくなってきて口角が上がってしまう、あのテニス部副部長の真田弦一郎君が大人しく縛られているなんて!と、内心で真田君を蹂躙していることに興奮していた。未だかつて感じたことのない感覚に戸惑う、私はこの感覚の処理の仕方を知らない。とにかくこの真田君を抱き締めたくてしかたがなくて、無抵抗に座っている真田君の膝の上に跨った。

「はぁ…真田君…」
「ナマエ!?急に何を…んんん!?」

真田君の言葉を聞かず、真田君の首に腕を回して唇を押し付けた。舌で突いて唇をこじ開けたら、2人の舌が絡まって貪り合うようなキスになる。動かせないようにした真田君の両手によって私の胸が形を変える。

「はじめてちゃんとキスできたね」

あと真田君の腕、後ろで縛ればよかったなと思った。

200619
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