小説
社交界で皐月先輩と会う
(高貴先輩がいる!!!!?)

設楽先輩に半ば無理矢理連れて来られた結果、まさかあの皐月優先輩を拝めることになるとは…。しかも美しいドレス姿。設楽先輩のわがままも、たまには聞いてみるものだ。
皐月先輩とは、私の1つ上の、きらめき中学時代の先輩である。成績優秀、品行方正、容姿端麗…男女共に多くの生徒の憧れの的で、学校のマドンナ的存在だった。そんな完璧を絵に描いたような彼女に、恐れながら、私も憧れを抱いていた1人だった。たった1度だけ、入学式の時に声をかけてもらった。曲がったリボンを直してもらって、3年間頑張ってね、と声をかけてもらったのだ。今思えば、その言葉がきっかけで、勉「おい」強も運動も真剣に取り組むようになったんだった。入学式以来、近づき難くて1度も話したことはなく、もちろん皐月先輩は私のことなんて覚えていないだ「おい」ろうけれど、昔も今も、皐月先輩は私の憧れで、むしろその憧れはさらに強さを増している気がする。

「おい!」
「ファッ!?ちょ、急に何ですか?」
「何度も呼んだ。お前、皐月の事ずっと見てるだろ」
「さささ皐月!?皐月先輩のこと呼び捨てとか信じられないんですけど!!」
「やっぱりな。知り合いか?」
「いえ…単に一方的に知っているというかなんというか。私、きらめき中学出身なので」
「なるほどな……よし、来い」
「えっ?うあ!ちょ!!設楽先輩??」

突然、手を設楽先輩の腕に絡めさせられ、設楽先輩に引っ張られていったのは…さきほどまで舐めるように見ていた皐月先輩のところではないですか!!??何考えてんだこの人!!??思わず設楽先輩の斜め後ろで待機。という名の硬直。

「久しぶり、優さん」
「あら!聖司くん、久しぶりね。最近、あまり見ないから父が寂しがっていたわ」
「また、挨拶しに行くよ。ところで…」

おい、と背中を叩かれ前に出される。逃げ場がない。

「あ、あの皐月先輩…」
「先輩?というと、きらめき高校の子だったかしら…?」
「いえ、私、きらめき中学からはばたき学園に入学して…在学時はほとんどお話したことがありませんでしたが、今回せっかくの機会だからと設楽先輩に取り持って頂きました」

よく回る舌で良かった。

「あぁ、どうりで。えーと、中学…中学…」
「あ!中学で1度だけ皐月先輩に声をかけて頂いただけで、本当に「思い出した!」
「えっ!?」
「確か、リボンを直してあげたんじゃなかったかしら?」
「そ、そうです!覚えてもらえていて感激です!」
「ふふ、印象に残ってたのよ。人の目をまっすぐ見て話を聞くところが。私も見習おうと思ったの」

そう皐月先輩に言われて、思わず涙腺が緩んだ。覚えてもらえただけで本当に嬉しかったのに、そんな風に皐月先輩に思われていたと知って、感動の他に、後悔のような気持ちが押し寄せてきた。こんな風に、もっと早くに皐月先輩と話せれば良かった。皐月先輩との時間は今日で終わる。無論、こんな風に今皐月先輩と話せるのは設楽先輩がいて、引き合わせてくれたおかげで、以前は恐れ多さが勝って遠巻きに見ることしかできなかったのだけれど。

「…わ、私はその時から皐月先輩に憧れて、先輩の言葉に励まされてきました」
「そうだったの、ありがとう。そういえば、貴方のお名前聞いてなかったわね」

そうだ。私は一方的に知っているけれど、皐月先輩にとってはあくまで私は1人の後輩なんだった。

「私は、はばたき学園3年の、ミョウジナマエと言います。改めてよろしくお願いしますね、皐月先輩」
「…ミョウジナマエ?…もしかして、貴方…今年のはば学のローズクイーンじゃない?」

その肩書き若干恥ずかしい。

「今年の文化祭で、一応頂いてしまいました…」
「ということは、本当に頑張ったのね」
「はい!努力だけは負けません!」
「…私はもう卒業してしまったけれど…高校の後輩に、貴方そっくりの子がいたの。とても一生懸命で、人の目をまっすぐ見て話すところが、本当によく似てるの」

「??そうなんですか?」
「良かったら、私とお友達になってくれないかしら?知っての通り、私友達少ないから」
「友達、ですか?」
「ええ、ダメ?」
「いいえ!とっても嬉しいです!!でも、後輩の癖に友達だなんて、イヤ、じゃないですか?」
「そんなことないわ。対等に話してくれる友達が欲しかったの。ミョウジさん」
「…じゃあぜひ名前で呼んで下さい!」
「えーと、じゃあ…ナマエ?」
「そんな感じで!優さん、って呼ばせてもらってもいいですか?」
「ええ。ふふ、不思議ね。在学中はほとんど話したことがなかったのに、卒業してから親しくなるだなんて」
「そうですね!それでも、優さんと友達になれて嬉しいですよ」
「…本当に、よく似てる」

その後、私達は連絡先を交換してその場をあとにした。気がつくと設楽先輩の姿がなく、ウロウロしていると壁際で花をやっている設楽先輩を見つけた。どうやら先輩なりに気を利かせてくれていたらしい。

「楽しかったか?」
「はいとっても!見てくださいコレ!優さんと連絡先まで交換しちゃったんですよ〜!」
「……俺と出会った時より遥かに嬉しそうだな」
「そりゃーもう!!だって設楽先輩、出会った瞬間暴言暴力かましてきましたからね」
「……悪かったな」
「でも、設楽先輩に出会わなければ今日の機会も、優さんとの出会いもなかったし、設楽先輩がいてくれて良かったです」
「そ、そうか。なら、いいんだ」
「ていうか町で優さん見かけても私だけじゃ高貴すぎて声かけらないだろうし」
「ハァ?」

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皐月先輩は、評価友好になるまで下校のお誘いができません。近寄りがたいから声をかけるのはやめておこうと主人公が自粛します。
友好になった主人公と初めて下校するとき、皐月先輩が誰か(後輩と?)と下校するの初めて的な発言をした覚えがあるので、そこから皐月先輩に声を掛けるのは恐れ多いと感じる人が多い=近づくには高パラ必要と勝手にご都合解釈。
最後の設楽先輩の「ハァ?」っていうのは、例の如く高パラじゃないから皐月先輩に話かけられない〜と言うバンビが、実際は余裕でローズクイーン達成パラ持ちなので、「お前そのパラで何言ってるんだよ」的な呆れから来るものです。
130322
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