小説
氷室先生と文化祭
「文化実行委員…だと…」

長らく仕事がなさ過ぎて自分の委員会を忘れていた。そうだ。私は文化実行委員だった。えっ…何すんの文実って…?クラスの出し物の多数決を取って、決まるや否や生徒会への逐一報告とクラス内での係分担、作業進行管理エトセトラ。こんなに仕事が多いとは想定外だった。そんなわけで文化祭準備期間中の私の下校時間は遅い。今日もかなり遅くなってしまった。同じクラスである不二山が送ってくれることもあるけれど、今日はバイトで既に学校にはいない。ルカに連絡したらバイクで迎えに来てくれたりしないかな…。

「ミョウジ。今から帰るのか?1人で?」
「えっうわ、ヒムロッとと先生…はい、そのつもりですけど…」

ヒムロッチもとい氷室先生が現れた!!

「女子生徒が夜道を1人で…感心しないな」
「す、すいません…でも同じ方向の子もういないんで…」
「仕方ないな。私が送ろう」

氷室先生に一緒に帰ろうとかお喋りしながら帰りませんかと誘うと、氷室先生のマサラティに乗せてもらえるとかいう噂がまことしやかに流れているけれど…。諸説ある都市伝説の1つだと思っていた。

「い、いいですよそんな…」
「何かあってからでは遅い。乗りなさい」
「はぁ…じゃあお世話になります」



お言葉に甘えて乗せてもらうことにした。内装は至ってシンプルだけど、可愛らしい色のお守りだとかシトラス系のフレグランスだとか所々に女性の影を感じる。奥さんかな?奥さんから貰った可愛いお守りつけてるとか。

「氷室先生って結構かわいいところあるんですね」
「婦女子は何でもかんでも可愛いと言う」
「そうでしょうか?」
「そうだ。不可解すぎる」
「奥さんに言われまくってるんですね」
「…そうとは言っていないだろう」

耳を真っ赤にしている氷室先生は奥さんにしてみればそれはそれは可愛いだろうな…。氷室先生はお見合い結婚ではなく恋愛結婚らしいというのは生徒の中では周知の事実だが、これはかなりの相思相愛のようだと思った。

180723
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