小説
ルドルフ臨時マネ

私、聖ルドルフ学院中学校3年のミョウジナマエ。男子テニス部の臨時マネージャーとして、主にドリンク作りとタオルやユニホームの洗濯、部室の掃除などの雑務全般を請け負っている。
太陽が照り付ける中、今日も今日とて、ベンチにどんっとスポドリ入りのジャグと替えのタオルを置いた。するとすかさず赤澤君がやってきてタオルを一枚手に取る。何故か上半身裸だ。コイツは本当にすぐ脱ぐなあ……どこまで焼けてるんだろう。パンツの際は、黒いなあ……。

「おぅミョウジ、お疲れさん」
「赤澤君もお疲れー。はいドリンク」
「サンキュー」
「ンンンッ、赤澤部長。ちょっと」
「何だよ観月」
「いいですから。ミョウジさんちょっと失礼しますよ」
「あ、はい」

赤澤君が観月君に腕を引かれて連れていかれた。何だろう、あの感じはたぶんお小言系だけど。寮で部屋も一緒の赤澤君は、観月君のお小言なんて聞き飽きてるんだろうなあ。

いいなあ、私もあの顔でたくさんお小言言われたい。それを言うと仲の良い木更津と柳沢にはドン引きをされるが、もともと臨時マネージャーを引き受けたのだって面食いが過ぎた結果だ。あのルドルフ1と言っても良いほど整った顔面を持つ観月はじめ君のサポートと聞いて秒で。ちなみにそれエサに私を釣ったのは木更津だ。

赤澤君と観月君の話は終わったのか、赤澤君はユニホームを着直してコートへ戻っていった。

「おかえり、観月君」
「ええ、ただいま戻りました。もう心配いりませんよ」
「心配?」
「だってあなた、目のやり場に困っていたでしょう?」

目のやり場……。今まさに観月君の満面の笑みが眩しすぎて直視できなくて困ってますが。おそらくそういうことではなく。

「赤澤君の裸のこと?あはは、さすがにもう見慣れたって」
「あら?そうでしたか?その割には視線が泳いでいたような気がしましたが」
「それは……」

これはもしやお小言チャンスでは。

「どこまで黒いのか気になっただけだよ?」
「どこまでっ……慎みなさい!んもうっ心配して損しました!」
「あはは」
「そんな慎みに欠けることでは嫁の貰い手に苦労しますよ…全く」
「心配してくれてありがと、お母さん」
「だ・れ・が・お母さんですか!」

お母さんな観月君もいいね。臨時マネージャー、ぶっちゃけ雑用係だけどこういう新しい発見があるから辞められない。木更津と柳沢には(観月の小間使いをしなくてよいことに)感謝されたし、選手を兼任している観月君は練習に充てられる時間が増えたし、私は観月君を近くで見られて目の保養が捗って良いこと尽くめだ。やっててよかった臨時マネ。

「まぁ行かず後家っていう手もあると思うんです、よ…」

何だって。

200525
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