小説
求導女の入れ知恵なのか、最近の牧野とミョウジは行動を共にしている。村の見回りや行事はもちろん教会や神代家の用向きから些細な日常に至るまで。村の連中からはお似合いだと評判で、それはもう彼女が後戻りはできないことを意味していた。

彼女はこの村を出るという選択肢は捨てて、この村に居着くことに決めたらしい。たとえ後戻りしようとしても、宮田としてもう既に彼女を逃がしてやることはできない。

牧野とミョウジは、見たところ順調に友好関係を築いている。恋人や婚約者といった距離感ではないものの、少なくとも友人程度の距離感にはなっていて、牧野の顔に出会ったばかりの頃のぎこちない笑顔はもう見えない。
そもそも牧野には庇護者の求導女と求導師として自分を慕う人間がいるだけで、同年代の対等な関係でいられるような相手がいなかった。だからこそ牧野がミョウジに惹かれていくのは自然だったのかもしれない。婚約者としてはともかく対等な関係でいられる存在として、牧野にとってミョウジは唯一無二になり得たのだろう。

ミョウジが村のことをあれこれと聞き、牧野がそれに答える。この間までその役目は自分だったな、と考えながら宮田は2人の姿を窺った。
特に問題はない。ミョウジ自身が仲良くできるか不安だと言っていたのにも関わらず牧野と友好を深める努力をしているし、村の連中とも積極的に関わって村に根付く準備もしている。
逃げ出す気配もなければ、計画とやらにも納得して反抗する気もないことは宮田の目から見て明らかだった。

牧野の傍らにいるミョウジは、神代家の女達を彷彿とさせる喪服のような装いをするようになったが、宮田はその姿に漠然とした違和感を覚えていた。彼女にはきっと清潔な白色の方が似合うに違いない。そう思うのと同時に、何故か死の間際の母の姿が脳裏を過った。

(181012 / )
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