小説
オープンキャンパスでは、もちろんお姉ちゃんと同じ大学を目指すつもりの俺は、迷わず一流大学に行った。一流には悪い虫がいる。当面、佐伯さんとか氷上さんとか、天地さん辺りだけど、敵は他にいた。
高校生?わぁかっわいい!あなたの弟?そんなことを言われながら、お姉ちゃんの友達に囲まれていじくり回された。俺の内面を攻める敵だ。傷つくなァ可愛いとかコンプレックスなんだから本気でやめてよ。弟とかも悲しくなるから勘弁して。お姉ちゃんの背はもうとっくに追い抜いたし、身体だって大きくなったけど、やっぱりお姉ちゃんとの決定的な差は縮まることは決してないわけで…。いつまでもガキな自分が悔しくなった。帰ろう。このままここにいたら俺は泣いてしまいそうだ。お姉ちゃんとその友達に会釈をして、そろそろ帰ります、と言おうとした時だ。俺の冷え過ぎた手が温かい何かに包み込まれた。

「弟なんかじゃないよ、私の大切な人なの」

そう言ってお姉ちゃんは俺の手を握って笑った。一緒に帰ろうと手を引かれながら、唐突に胸をいっぱいに満たした幸せを噛み締めていた。周りから言われたことなんてもうどうでもよくなっていたというかぶっとんだ。それよりも、確実に縮んでいた距離を実感して、嬉しくて幸せで、俺はお姉ちゃんの手を強く握り返した。そして俺はまた思うんだ。やっぱり俺、この人のことが大好きだって。

「お姉ちゃん。ナマエさんって、呼んでいい?」

(120203/end)
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