小説
俺は高校生になった。お姉ちゃんが俺のお隣さんになった時と同じ歳。お姉ちゃんはもう二十歳で一流大学の4年になる。



今から3年前、お姉ちゃんがはばたき学園を卒業したあの日、お姉ちゃんのことが心配になってお姉ちゃんを探し回った。卒業式からかなり時間が経った頃、遠くからお姉ちゃんが歩いてくるの見て安心したと同時に、その先には海と、灯台があるのを思い出す。灯台の方へ寄り道してきたんだろう。恐る恐る声をかけると、お姉ちゃんは俺を見て寂しそうに笑った。帰ろうか、とお姉ちゃんが右手を伸ばして言うので、俺はちょっと戸惑ったけど、その手を取りながら、うんと返事をした。お姉ちゃんの手が思っていた以上に冷たくて、小さくて、俺はどうしようもない思いでいっぱいになる。溢れそうだ。
黙っていれば、ずっとこの関係は崩れないんだろう。それでも、どうしても伝えたいと思うのは、きっと全部終わらせてしまいたいからなんだろう。この気持ちを大切にしたいからこそ、これ以上傷つく前に、汚れてしまう前に。だから、俺打ち明ける決心を、いや、終わらせる決心をした。

「…お姉ちゃん」
「なぁに?」

お姉ちゃんの方を向くと、目線はもうほとんど変わらない。

「俺…お姉ちゃんの事、好きなんだ」
「……」
「ずっと好きだったんだ」

初めて会った時から、ずっと。



結果から言うと、終わりにはならなかった。正確には、一度終わって、また1から始まったと言ったところだ。俺は伝えてそれではい終わり、ぐらいを予想していたんだけれど、お姉ちゃんの答えはその斜め上を行ったものだった。というのも、もう少し大人になったら彼女になってあげる、だってさ。(軽くあしらわれた気がしないでもないけど、少なくとも俺にとっては前進だ。)そして、お姉ちゃんとは小学生の頃とはちょっと違う、微妙な距離を保っている。部屋を行き来することが減って、一緒に出掛けることが増えた。お姉ちゃんはもう少し大人になったらって言ってたけど、もう少しってどれくらいなんだろう。その約束は、そのもう少しという間に消えてしまわないのかな。不安でたまらない。

(120203/)
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