小説
お姉ちゃんに俺のことを好きになってもらうのは、年齢差さながら、今すぐにとはいかない。きっと長期戦になる。だったら、まずは外堀から埋めていくに限ると思うんだ。そう思って、とりあえず敵状視察ということで、お姉ちゃんの同級生とかの情報を手に入れた。王子様風なのに実は屈折してて料理好きなエセ王子だとか、187cmの運動神経抜群で甘い物と動物好きなクールガイだとか、真面目っぽいのに行動言動がいちいち面白い眼鏡だとか、ちょっと俺様系だけど唯一年相応な感じでところどころ子供っぽいバンドマンだとか、はんなり寄りの関西弁をしゃべる見た目明らかに外国人だとか、おっとりまったりしているのに実は天才科学者な過去を持つ担任教師だとか…エトセトラエトセトラ。おい!!!キャラ濃すぎなんだけど!!!???ギャップ萌えってかふざけんな。して、その敵状視察にて手に入れた情報は、今では当たり前のようにお姉ちゃんに横流しされている。どうしてこうなった。いや…横流ししているのは他でもない俺自身、そうすることを決めたのもまた、俺自身。ちょっとカッコつけて、頼りにされたかっただけなんだ…。そんなちょっとした下心が、今では俺を苦痛の淵へと追いやっているという…。まぁ、自業自得なんだけどさー…。

自分から言い出したことだから引っ込みつかなくなってるし、引っ込みがついたらついたでカッコ悪すぎだし…。一度やるって言ったからには、最後までやり通したい。それに、辛いと言っても悪いことばっかりじゃないしね。お姉ちゃんと話すきっかけにもなるし、何より頼りにされているという、年下の俺ではフツーは絶対にありえないレアなシチュエーションであるわけで、だから俺は多少の苦痛なんかどうってことない。そう思って、俺はまたお姉ちゃんにまた情報を提供する。惚れた弱味ってヤツ?


でもやっぱりちょっと泣ける。

(110619/)
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