「あの辺の連中はお前に会うまで帰らないんだと」
「ハァ!?何なんだそれは……」
女というのは本当に面倒くさい。溜め息をついて受付横にある椅子に座った。俺の持ち場はここだ、給仕はしない。すると、さきほどまで席にいた女共が群がってくるがオーダーしないなら帰って下さいお嬢様と言えば、喜んで席に戻って飲み物を頼み始めた。ちなみにこれはクラスメイトの女子生徒が考えた定型文の1つである。ほぼ機能していなかった教室が慌ただしくなり活気を取り戻した。
「……フゥ」
「設楽せーんぱい!」
「うわッ!?」
俯いた瞬間に話しかけられて驚く。この声は、
「小波か……」
「はい♪昨日の劇、お疲れ様でした!」
「お前もな?」
「今日はもう自由時間とかは……」
「悪い、ついさっき終わったところなんだ」
「……一緒に回りたかったですね、残念です」
「………」
俺は、
「どうかしましたか??」
残念じゃないんだ。一度崩れたら元には戻らない。それが心地いい風に吹かれて消えてしまったのなら尚の事。あんなに手に入れたくて仕方がなかったのに、俺は自分の手で握りつぶしたんだ。
(130610 / end)