ネタ
game DQB2 からっぽのてっぺん@

死ねないシドーだけが残った数百年後の世界の話。数百年後の世界のため理に歪みが生じ始めています。男主。

薄暗い礼拝堂に、ステンドグラスから光が差し込んでいる。昔ながらの石造りの教会は、空調設備がなくてもどこか過ごしやすい。この街はずれにある教会は穴場だ、こんなにも過ごしやすいのに人気がないのだから。

その理由は明白だ。ここを管理しているシスターは妙に小煩い。しばらくすると、今日も彼女は説教を説き始めた。ここには僕とシスターしかいないから、きっと僕に説いているのだ。更生させようとしている、かつて馬鹿な夢を語った僕を。おとなしく話を聞いている僕は、それはそれは信心深く見えているはずなのに、用心深いシスターには通用しないみたいだった。
凛とした力強い声は、親の声よりも聞いただろう。もうシスターが語る物語とも呼べるその内容を諳んじることができてしまう。世界のはじまりとこれまでの歴史、はじまりの無人島の話、伝説のビルダー達の話……。

――現代では、

その冒頭を聞いて、ああ、今日は“守り神様”の話かと、シスターの声より先に頭の中で内容が再生されていく。僕はシスターが語る神話の類は全部好きだけど、守り神様の話は特に気に入っているのだ。



『現代では機械化が進み、それらがもたらす便利さを誰もが享受している。しかし、それを当たり前に思
ってはならない。
今の我々の豊かな生活は、世界の守り神様が御身の一部を分け与えてくださっているからこそ成り立っている。そのことを忘れてはならない。』



機械を組み上げる際に必要不可欠な金属――シドニウムの具体的な生成方法は、資源保存の観点から僕のような一般市民には開示されていないのだけど、その大元は神話を全面的に信用するならば、神様の身体の一部が素材になるのだと言う。そしてそれは、牙や爪などではないかとされている。

大昔の人々がたまたま牙や爪みたいな形をしていた素材を守り神様の抜け殻だと言い出しただけかもしれない。守り神様なんて本当にはどこにも実在していないのかもしれない。けれど、いて欲しいなと思う。
守り神様の話をはじめて聞いたとき、僕は思ったのだ。いつか守り神様を見つけて素材にしてやろうって。

牙や爪のような抜け殻でこんなにすごいものが作れるのなら、生身から剥いだ牙や爪を使ったら何かでっかいことができるんじゃないかって。神様とかよく分からないけれど、牙や爪があるということは神様はドラゴンのような姿をしているに違いない、僕ならきっと勝てる。そのためにずっとずっと力をつけてきたのだから。

僕は守り神様の逆鱗をどうしても手に入れたいのだ。


2019/03/20
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