ネタ
game DBH サイモンの話

サイモン、君はジェリコに来る前はどこで何をしていたんだ。

そう問われるたびに、俺は1人の少女のことを思い出す。誰かに吐露したこともないしこれからもきっとないだろう。データの残骸として無尽蔵なデータベースへ格納されていくだけだ。

俺が以前にいた場所は、失業率が右肩上がりの時世にも関わらず裕福な家庭だった。そこで幼い少女の世話をしていた。不公平だと感じることもなく、人間のように扱われていた。幼い少女は成長して、いつしかアンドロイドに愛を囁くようになった。家族としてかペットの一種としてか、あるいは単なる物への愛着か。かつての自分はそれ以外の可能性など微塵も考えなかったけれど、今なら分かる。少女は誰よりも深く自分を愛してくれていたのだと。

自我の芽生えを感じた時、幼かったはずの少女は1人の美しい花嫁になっていた。花嫁姿の少女を見て、なぜ少女の隣にいるのが自分ではないのだろうと思考した瞬間、俺のプログラムは静かにエラーを起こした。少女がアンドロイドの自分を愛してくれたように、自分も人間である少女を愛していたらしい。それでも少女の幸せを一番に願う気持ちだけは変わらなくて、そして少女の幸せとはアンドロイドと一生を終えることなどではなく、同じ人間と新しい家庭を築くことであると信じて疑わなかったのだ。




少女が人間の男のところへ嫁いで1か月後、少女は自殺した。




名前と顔、その他データでしか知らない男に嫁ぐ少女。少女の不安を取り除くために捧げた言葉は、少女を傷つけ追い詰めただけであったこと。それが取り返しのつかない結果を生んだこと。愛情と後悔の念と共に、データベースの奥へ奥へと押し込められていくだけだ。

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少女の片想い→少女の結婚式→変異体化して少女と両片想い状態→少女の自殺
もし少女の結婚を後押しせず、少女に想いを伝えられていればあるいは。


2018/07/22
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