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anime osmt 長女@

私が松野家とは何ら関係のない人間であると知ったのは、高校3年に進級したばかりの頃。17年間育ててくれた両親も2つ下の6つ子の弟たちも、本当の家族ではないと知り、ショックを受けた。しかし、どこか納得する自分もいた。

#名前#だけが誰にも似ていない、とは、昔からよく言われていた。
弟達が6つ子でお互いそっくりなこともあって、並ぶと私だけ別物に見えるのは仕方がないと思っていたが、それは関係がなかったみたいだ。


タイミングが高3の春だったのは、私の進路に関して思うところがあったかららしい。
当時の私の進路は就職希望だった。下に6人も弟がいるし、高校を出てすぐ働くことに不満も疑問もなく、むしろ家族を助けられるようになることに喜びさえ感じていたので、自分としては何も問題はなかったのに、
それに待ったをかけたのは、その時の担任と両親に他ならない。

どうしてそこから、真実を伝える流れになったのかというと、弟たちのことを考えて働くことを選択した、というのはそもそもバレバレで、それがお金の心配をして、遠慮しているという風に解釈されたかららしい。

お金の心配はしなくていいこと、本当の親御さんが残してくれていること、それを伝えるためには、自分たちと私とが、血のつながりがないことを説明しなくてはならなかったこと。
本当は成人してから伝えるつもりだったこと。でも今伝えなければ、私が人生を棒に振ってしまうかもしれないと思ったこと。
今思えば、就職のままにせよ進学に変えるにせよ、ものすごいタイミングにぶっこんできたと思う。情緒不安定でどっちつかずになるとか考えなかったんだろうか。
結果的に言えば、ショックは受けたものの、想像よりも早く自分の気持ちに折り合いをつけ、大学に進学することができたのだけど。

血でつながった両親が残してくれた遺産は、莫大な金額かというとそういうワケではないが、大学に行くには十分足りるほどだった。
私の進学費用なんかじゃなくて、このまま家計の足しとか弟たちの学費に充てたりとかしてもらってよかったのに。私名義の通帳を見ながら、そんなことを思った。

しかし、それを口にしたら、本当に本当の家族じゃなくなってしまう気がして、飲み殺した。私が本当の両親だと思っている両親は、そんなことを望んじゃいないことは分かり切っていた。

だから、私は通帳を手にニッと笑って、

「良い大学出て良いとこ就職して、お父さんもお母さんも私が養ってあげるよ」

あ、ついでに弟たちもね。忘れていたように付け足してそう言うと、
2人は少し涙目になりながらも笑って、力強く頷いてくれた。



本当は心のどこかで焦っていた。
本当の家族じゃないなら、本当の家族じゃないから、本当の家族のように振る舞わなくてはと。
本当の家族って何だろう。


私、今ちゃんと家族できてる?


2016/04/06
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