ネタ
aot アルミンに笑って欲しい女の子@

「ハァ…」
「#名前#元気ないね?」
「どーせアイツ関係だろ、ほっとけよクリスタ」
「もうっ!ユミルだって心配してるくせに!」
「あ!?もっぺん言ってみろよこの可愛いお口でよォ」
「んっ!?んぐぐぐーーーぐぐー!!」

あー…コイツらかわええ癒されるわぁ……

肩肘を立てた向こう側で目眩く展開される癒し空間へ現実逃避の1つでもしたいところではあるが、そこから私はチラリと、できる限りさり気なく“彼”の元へ視線を移した。
いつものメンバーと夕食を共にする彼の顔は、いくら振りまいても絶えることのない笑みで満ちている。

いまだ、私とテーブルを隔てた向こうでは、クリスタとユミルの攻防という名の戯れ合いが続いているものの…。ああ……私はなんて欲深い生き物なんだろう。たかが1つの溜息に心配してくれる優しい友人たちに恵まれながら、あそこにいる1人の少年が、自分に、私にその笑顔を向けてくれるコトだけを夢見ているのだから。

私が彼を見つめていると、ふと彼も私に視線を向けてくれることがある。今もそうだ。
これで、もし私が彼と友人として、いやせめてごく普通の人間関係を育んでいたなら、少し照れた感じではにかんで…もしくは困った感じに苦笑して会釈とか小さく手を振ってくれるとか!

しかし生憎全くもってそんな人間関係を育めてはいないし、というかむしろ…


「あーあーまァた泣かせてやんの」
「泣いてないよ!泣いては、ないよ…ね?」
「ユミルーー!クリスターーー!」


恐怖に染め上げられたと言っても過言ではないくらいの表情に早変わりし、即座に視線を逸らされた。こっそりと聞き及んだクリスタに好意を持っているという情報ももはやあてにならない。私の近くにいるクリスタも、彼は視界に収めているはずだ。

その好意を上回るほどに、彼は、私のことを嫌っている、ということである。嫌っている?いや、怯えているのだ。私に。

ソレが悲しくて、涙を堪えるように眉を顰めれば、睨んでいると勘違いされ、羨ましくも彼の両側に身を置く彼の幼なじみ2人にガン付け返されてしまう。


「こわーいナイト様お2人が睨んでいらっしゃるぜ」
「ミカサは女の子でしょ!」
「クリスタって着眼点独特だよね」
「えっ!?そ、そうかな…初めて言われた」
「話逸らしてんじゃねーよ#名前#。ったくいい加減アイツ等どうにかしてこいよ、うざったくて仕方ねぇ」
「あー…巻き込んでごめん。私が悪いには違いないんだけど、ここまで嫌われてると今更どうしていいやら…」


何の非もないアルミンを、私の視線で怯えさせてしまうのは…申し訳ないと思うけれど、それはほとんど自制の及ばない部分であって、無意識の間に目で追ってしまうので、すぐに止めることは無理そうだ。
入団してかれこれ1年が経った今でもできていないのだから。

苦笑しながら、よくもまぁここまであの2人には嫌われたもんだなぁと考える。これはちょっとやそっとでは覆らないだろう。彼らとの付き合いはなんだかんだ長い。つまり、今の関係に至り落ち着くまでの歴史も長い。


私も一応、彼と、彼らとは幼なじみなんだけどなー…。なんて不毛な関係性を持ち出してみる。


いや、エレン・イエーガーとミカサ・アッカーマンとはほとんど話したことはなかったっけ。
けれどアルミンとは、アルミン・アルレルトとは、家が近くてよく一緒に遊んでいたくらいには、仲が良かった。
1つ年下の幼い彼は私よりもずっと賢く、本で得た知識を私にたくさん教えてくれた。そして私は、アルミンの話を聞くのが大好きだった。よく覚えている。今は亡き家族と過ごした記憶よりも、彼との思い出の方がよほど鮮明に。


どうしてそんな幼少期を過ごしておきながらこうなってしまったかというのは、心当たりがありすぎて、そしてそれは今更どうしようもないことなのだから、自業自得ということで諦めたつもりだった。
生死さえ定かでなかったアルミンを入団式で見つけて涙が溢れそうだった。
それで、十分なんだと言い聞かせて1年が経つ。それは諦めきれてねーだろとユミルに突っ込まれ、人間とは欲深き生き物なのだよと返しておいた。
そう、諦められていないのだ。だからこそ、いまだに夢を見ている。また、彼が私に笑いかけてくれるだなんて幻想を。


「…お前がアイツ大好きなのはよォく分かってる。ただな?ミジンも可能性がねぇにも関わらず想い続けてるって奴は、傍から見てると相当カワイソウで、コッケイだぜ?」
「ユミル!そんな言い方…!」
「大丈夫クリスタ。自分が一番分かってることだよ」
「ま!他に男でも作ってみたら案外さっさと忘れられる問題かもな」
「ねぇクリスタ、良かったら今夜私と…」
「男っつってんだろ」


ユミルの平手にパシッと小気味よく頭をはたかれたところで、食事とこの話は終了した。ユミルにはクリスタとは違うわかりにくい優しさがあると思う。
そして私は、その口が悪くてストレートな物言いをする彼女の、そんな不器用な優しさを気に入っているらしい。

なるほど、恋人か。

それはアルミンで頭がいっぱいの私には、思いも寄らない発想だった。それも1つの手段なのかもしれない。遠くで幼なじみの名前を呼ぶアルミンの声がした。ついいつもの癖で、声がした方へ視線を向けてしまう。やっぱりこの反射神経は本能に並ぶものがある。私の視界に映った彼の横顔は、笑っていた。


…やっぱり私はまだ、忘れられそうにないなぁ。


小さな身体で、細い両腕いっぱいに抱えた大きな本を広げて、私の知らないたくさんのことを話をしてくれた、彼の輝く笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。



アルミンに怖がられ、エレンとミカサに嫌われる理由はアルミン視点で


2014/08/02
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