ネタ
aot トリップ主の妹

お姉ちゃんは、まるで壁の外の世界を見てきたかのような口ぶりで世界の話をしてくれる。

見ることも聞くことも怖がるようにして拒絶するお姉ちゃんだけど、話すことにだけは積極的で、その時間だけは、いつも楽しそうだった。外を知らない人達は、お姉ちゃんの話を妄言だと馬鹿にしていた。正直なところ、私もお姉ちゃんの話は面白くて大好きだったけれど、それが本当のことだとは信じてはいなかった。

その何年か後、私は訓練兵に志願し、入団した先にいた同期の男の子が、偶然にも外の世界についての本を読んだことがある、だとかで、外の世界について教えてくれたのだ。
驚いたことに、彼の話は、お姉ちゃんが話してくれたこととほとんど同じだったのだ。いや、むしろお姉ちゃんの話の方が幾分も――。

お姉ちゃんも、同期の彼、アルミン・アルレルトのように、どこかで外の世界に関する本を読んだのだろうか。…そんなことができるわけがない。だって私が知る限り、お姉ちゃんの目は、耳は、機能していなかったのだから。

そんなお姉ちゃんの最期の姿は、巨人を前にして臆することなく、むしろ不自然なほどに落ち着いていて、まるでそれを待ち望んでいたのかと思うほどに静かに、穏やかに、食べられていった姿だった。

人間と関わることを極端に恐れたお姉ちゃん、
どうしてか異様に外の世界について詳しいお姉ちゃん、
最期、あまりにもあっけなく食べられたお姉ちゃん、

彼女は何者だったのだろうか。私とはとて似つかない、黒い髪と黒い瞳を持つ綺麗な人。

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お姉ちゃん→現代からのトリップ主。現状が受け入れられず壊れてしまった。
妹→小さな農村地の子。家族が行き倒れのお姉ちゃんを拾い、その後生まれる。


2013/10/08
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