ネタ
comic nbng サブローの後にトリップA

この切迫したきんの糸をぶっつり切る人物が現れる。

「殿!」
「帰蝶、恒ちゃんどうし…あ」

お姫様が慌ててその“殿”に駆け寄るのが分かった。殿って、殿様?振りかぶられていたであろう刀はまだ私の首と胴体を切り分けていない。とりあえず永らえたらしい。しかし、殿様って…もしかしてこの美しいお姫様みたいな人は本当にお姫様で、私はその本物のお姫様にしゃがみ込ませて物まで拾わせて気軽に話しかけて、無礼を働いたからその場で切り殺されそうになっていたということでいいのだろうか。殿様…がわざわざ現れるってことはつまり……。恐ろしすぎて顔があげられない。きっとあげたらその瞬間に首がぶっ飛ぶんだろう。本気でぶっ飛んで死ぬ、そこでおしまい。これが夢じゃない限り、これが時代劇だとか中途半端なものじゃなくて、本当の本当で本物の本物、リアルなんだということはとっくに分かっている。私は自分でバカだとは思うけど、ついさっきの自分の行動を間違えて記憶するほどではないと思っている。寝るまでの記憶は絶対だ。……夢、じゃなかったら、このすぐ近くにいる人は本当に本物でどっかの時代の殿様で、お姫様で、その人達を守る従者とかなんだ。

「お前、#名前#じゃね?」
「…ハ?」

しまった、声が出た。顔も上げてしまった。首に再び突き付けられていたらしい刀がススッと私の首に切れ目を入れた。

「サ、ブロー…せんぱ…い…?」
「やっぱり#名前#だ!ちょ、まず止血止血!!」

着物を着ていたし、殿とか呼ばれていたけど、サブロー先輩だ。何でいるのだとか、助かっただとか、色々思うことがあったけれど、急に意識が朦朧としてきて考えたくなくなった。サブロー先輩が、身に付けている高そうな着物をビリビリと豪快に破いて私の首に巻きつけているのがうっすら見えたけど、何かもう、どうでもいい。


2013/08/30
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