ネタ
wj jojo 露伴とぶどうヶ丘高校のマドンナA

それ以来、#苗字#さんとはよく会って話すようになった。話題は専ら露伴先生の『ピンクダークの少年』についてだ。共通点は他にも学校のことだとかがあるけれど、学校の外で(ちなみにココはカフェ・ドゥ・マゴだ)学校の話、特に勉強の話なんてしたくないという僕の心の声を、彼女は十分に理解してくれている。直接言ったことはないのになァ。空気を読める人、というのはこういう人のことを言うのだ。そして、この相手の気持ちをくみ取る力は彼女の魅力の一つだと思う。
彼女のピンクダーク少年についての話を聞いていると、本当に愛を感じる。露伴先生へのではなく、作品へのだ。いちごパフェを突きつつ、一生懸命ピンクダーク少年の素晴らしさを伝えようとする彼女はお世辞抜きにとても可愛い。
そうしている彼女の横目に、僕は彼女に謝りたいことを思い出していた。初め、彼女が露伴先生に会いたいと言ったとき、それは露伴先生が顔(だけ)は良くてお金も持っているからなんだと思っていた。彼女はずっと彼氏がいない。その理由は彼女の理想が高すぎるからだというのは学校中で知られている。露伴先生なら、彼女の理想とやらに当てはまっても不思議じゃあない…。実際、彼女相手なら(露伴先生から見たらちょっと若すぎるかもしれないけれど)あの露伴先生でも簡単に落ちてしまうような気さえする。気配り上手な#苗字#さんと自分勝手な露伴先生は、ちょっと似合う。

「ピンクダーク少年は見た目はとっても可愛いのに彼の精神は本当に格好よくて強くて…って康一君!私の話聞いてるのーー?」

最近、彼女は僕のことを名前で呼ぶようになっていた。仲良くなった人は名前で呼びたいんだって。つまり間田とは仲が良いってほどではないらしい。何となくほっとする。

「ごめんごめん。ちょっと考え事してた」
「そっかー、私も喋り倒しててごめんね。あ、パフェ溶けないうちに食べちゃわないと」
「パフェおいしそうだね」
「美味しいよー一口いる?」
「えっあっいやそういうつもりは」
「いいよいいよ、はい口あけてー」

こういうことを平気でするから、勘違いする人が出てくるんだろうなぁと思いながら、本当においしそうなのでスプーンを借りて自分で食べた。

「露伴先生ってどんな女の子が好みかな?」
「え?」

康一君、口のところ生クリームついてるよーと言いながら頬をぐいと拭われる。されるがままで、頭の中は別のことでいっぱいだ。もしかして僕の憶測が実は合っていたっていうパターン…?もしくは両方?(両方というのは作品はもちろん好き、あと露伴先生にも興味があるという意味だ)

「それは一体どういう……」
「露伴先生に会ったら、お願いしたいことがあるんだァ〜」

それはサインだとか握手だとかだろうか。そんなことをお願いだなんて言う彼女は本当に可愛い。女の子って感じがする。

「ちょっとでも露伴先生好みにしておいた方がお願い聞いてもらえそうだと思って!康一君知ってる?」
「そういう意味か…どうだろう?露伴先生は変わってるからよく分からないなァ。でも、#苗字#さんを嫌いになる人ってなかなかいないと思うよ」
「ホントにー?でもちょっと自信ついたかも、ありがとう!」
「そんな…むしろ力になれなくてごめんね」
「……」

#苗字#さんが急に黙り込む。………言ったことは本心だったんだけど、僕は何かまずいことでも言ってしまったのかもしれない。

「#苗字#さ「…私ねーピンクダーク少年と出会わなかったら、康一君のこと好きになってたかも!」
「ええッ?!」

どうしてそうなった。そんなことを言い出す彼女を見て、僕はますます露伴先生のところへ連れて行っていいのかどうか判断に困った。……露伴先生は、絶対この子気に入ってしまう。理由なないけどそんな確信が生まれた。本当にどうしていいのやら……。しかし、僕が心配していたこととは全く別の事件が既に発生していた。





2013/08/30
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