ネタ
wj jojo ディオの妹

私は母親の顔を知らない。生まれてすぐに亡くなったらしい。父親も病気で死んでしまった。だから私は、これからはお兄様と2人で生きていくのだと思い込んでいた。…普通に考えれば、あの家に私達2人が生きていけるだけの蓄えがないことは分かるし、子供の私達が働いたとしても、食いつなぐだけで…いや食いつなぐことさえままならなかったかもしれないってことも想像できる。だから、父の遺産である人脈に縋るというのは最良なんだろう。お兄様は頭が良いから、お兄様の選択に間違いなんてあるはずがない。けれど、少しだけ不満が、いや未練みたいなものがあった。普通に考えれば分かることがすぐに分からず、”お兄様と2人で生きていく”だなんて思い込んでいたのは、それが願望だったからに違いない。そうであって欲しいと心のどこかで思っていた。誰にも、特にお兄様には絶対に告げてはならないこの感情は、ずっと昔から存在していた。気づかれてしまえば、お兄様はもう二度と私を抱きしめてはくれないだろう。

お兄様に連れられるがままにやって来た豪邸に、私は感嘆の溜息をついた。いつかお兄様が読み聞かせてくれたおとぎ話に出てくるようなお城みたいだ。今まで住んでいたところとは全く違う(私はお兄様と一緒にいられるのなら、住む場所などは些細なことなんだけど)。お兄様は、見目は美しく所作も上品で、本物の王子様のようだから、このお城のような豪邸がよく似合う。

「#名前#、これからお世話になるジョースター卿のご子息であるジョナサン君だ」
「お、お初にお目にかかります。#名前#ともうします。ジョナサン様」
「ハハハ、妹かァ…嬉しいな。#名前#、僕のことはもっと楽に呼んでくれ。ちなみに友達は皆ジョジョと呼ぶよ」

ジョナサンは腰を少し屈めて私と視線を合わしてくれた。少し驚いたけれど、私はそのおかげでジョナサンをすぐに気に入った。(本物の紳士を目指すジョナサンにとってはそのさり気ない気遣いは当然。しかし、見下ろされて話すことに慣れていた#名前#にとってはとても新鮮なことだった。)

「ジョジョ!素敵な呼び名ね!!」
「こら#名前#…気を許すとすぐコレだ。許してやってほしい。にわか仕込みの礼儀くらいしかなってないんだ」
「#名前#はおてんばなんだな。元気がよくて、僕はとても良いと思うけど」
「まさか!ジョースター家に世話になるのだから、立派なレディになってもらわんとな」
「頑張るわ」

私は新しい友達ができた気分で、少しでもジョジョと仲良くなれるようになりたいと思った。隣にいるお兄様の声色は柔らかくてきっとお兄様も同じことを考えているのだと、思った。この時、私がちゃんとお兄様の目を見て、お兄様の考えを問うていれば、私達は道を違うことはなかったのかもしれない。


2013/08/30
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