ネタ
rkrn 鉢屋小ネタ

女の手が、顔と首に伸びてきた。化粧がのる顔と地肌がさらされている首は、鉢屋門外不出のおしろいで境目が悟られないようにならされている。
指先の冷たさが心地よくて、微睡みに従いそうになって目をきゅうと細めところで、爪の鋭さが現実に引きずり出した。

「ッ!!?」

雷蔵の変装を剥がされそうになっていることに気がついて、驚愕と共に女から距離をとった。その際、女の爪が皮膚を引っ掻いて、首筋に血がにじんだ。
心地よさを与えながら傍らでは虎視眈々と、明確に、たしかに存在する首筋の境目を探っていたのだ。
女は真っ赤な舌で指を舐めて、口角だけで笑う。
痛みよりも屈辱よりも強く植え付いた感情は、欲情とも呼べそうな果てしない酔いとそれに対する恐怖だった。

見つかった。もう隠せない。


2021/04/06
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