闇の魔術に対する防衛術の授業を終え、溜息を吐いて歩いていると呼び止められる声が聞こえた。
「やあ、名前」
「あらフレッド。一人?」
「うん、まあね。名前を見つけたらジョージ走って行っちゃったんだ」
自然と苦笑いが零れてフレッドは肩を竦めた。
あの朝以来ジョージは拗ねっぱなしで話そうとしない。
話しかければ返してはくれるのだけれど。
「困ったわね」
「まあ、そのうち機嫌も直るさ」
「それなら良いんだけど」
フレッドはそう言って大丈夫だと笑う。
それからロックハートの話になり、散々だと話す事でげんなりしていた気持ちが少し消えた。
ニヤニヤと笑っているフレッドはどうやら何か悪戯をするらしい。
「そういえば、レイブンクローの子に告白されたんですってね」
「ジョージくん好きですってな」
「まあ、フレッドの顔したジョージが好きなのね」
「だろうな」
ケラケラと面白そうに笑ってジョージのフリをしようかなと呟く。
私からすると似ていないのだけれどやはり皆はそっくりに見えるらしい。
アンジェリーナやシャロンは流石に見分けが付くらしいけれど。
翌日談話室に降りていくとロンとハーマイオニーからクィディッチの練習の話を聞いた。
シャロンが見に行くと張り切っているのでせっかくなら、と皆の朝食をバスケットに詰める。
シャロンが先に行ってしまったのでのんびり歩いて競技場に向かう。
けれど競技場では誰も飛んでおらず、赤色と緑色のユニフォームが見えた。
言い争う声に嫌な予感がしたけれどシャロンもいるので集団に近付く。
「生まれそこないの穢れた血め」
ドラコがそう言った瞬間皆が怒って、ロンが呪文を唱えた。
杖が折れているせいだろう、ロンがナメクジを吐き始める。
スリザリンチームが大笑いしている中、ハリーとハーマイオニーがロンを連れて行く。
私はドラコに近付いていって笑っている頬を思い切り左右に引っ張った。
ドラコは慌てて私の腕を振り解き自分の頬に手を当てる。
「ドラコ、そんな言葉を使うのは辞めなさい」
「…名字、僕に構うな」
「私の事もそう呼びたいのなら呼べば良いわ」
一瞬衝撃を受けたようなドラコの顔が見えたと思ったらスリザリンの上級生が立ちはだかった。
慌てた様子でウッドが私を引っ張ってスリザリンの上級生と睨み合っている。
「名前、行くよ」
そう言って私の手を掴んだジョージと隣に並んだフレッドと城に向かって歩き出す。
二人とも一言も話さず、ただ無言で城を目指している。
偶に隣のフレッドがチラチラと此方を盗み見ているけれどジョージは全く振り返らない。
私自身は怒っている訳ではないけれどスッキリしていないのも確か。
ドラコがいつかあの言葉を言う事は解りきっていた事だったし。
中庭でピタッと足を止めたジョージにぶつからないようにフレッドが支えてくれる。
ジョージは振り向こうとせず、私がフレッドと顔を見合わせているとその場にしゃがみ込んでしまった。
「ジョージ?どうしたの?」
「…名前にあの言葉は聞かせたくなかった」
フレッドが人差し指を唇に当ててバスケットからトーストを何枚か取って去っていく。
それが不思議で首を傾げているとジョージが抱き付いてきた。
小さく耳元でごめんと呟いたジョージの背中をトントンと叩く。
「大丈夫よ、ジョージ。気にしてないから。それより、トーストどう?お腹空いたでしょ?」
ジョージが頷いて離れた時に情けない顔をしていて思わず笑ってしまった。
少し拗ね気味のジョージの口にトーストを押し付けてまた笑う。
(20121023)
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