ビルから手紙を受け取ってチェシャーにお水をあげてから開く。
何故かビル以外からもあり、どうやらそうとう長旅をさせてしまったらしい。
パーシーに双子にジニー、モリーさんからまである。
今年は隠れ穴ではなくシャロンの家にお世話になっていた。
だからこんなに手紙が届いたのかもしれない。
そういえば一応ドラコに手紙を出したけれど彼は受け取っただろうか。
全員分手紙を読んで返事を書いて、とりあえずチェシャーにビル宛ての手紙をお願いする。
残りの手紙を持って部屋を出るといきなり飛びつかれた。
すっかり慣れたけれど相変わらずよろけるのは変わらない。
「シャロン、梟を借りたいんだけど」
「梟?良いわよ」
梟小屋に向かう私の後ろをシャロンがついてくる。
普段は特に意識していなかったけれどシャロンも純血一家。
初めて訪れたオルコット家はとても大きく広かった。
梟小屋があって梟が何羽も居て屋敷しもべ妖精が沢山居る。
「名前、今晩ね、パーティーがあるのよ」
「パーティー?」
「招待されてて、名前もどうかしら?純血主義が沢山居るから名前には少し大変かもしれないけれど」
純血思想、と聞いてある可能性が思い浮かぶ。
見た事はないけれどきっと彼の家もこんな感じだ。
シャロンのお母さんにドレスを借りてドレスアップした私はカナッペをかじりながら会場を見渡している。
流石はお金持ちが集まるパーティーで、聞こえてくる名前は私でも知っているものばかり。
最初はシャロン達と居たのだけれど仲良さそうな家族に連れて行かれてしまった。
愛想笑いをするのは苦手ではないけれどあまりしたくないのでこれはこれで良いのだ。
私はオルコット家の親戚という事になっているけれどバレても不思議じゃない。
不意に目に入った綺麗な色に目を奪われる。
やはりダイアゴン横丁で見たのはマルフォイ一家だった。
ドラコの肩に大事そうに手を置いているのは母親だろう。
近くに居るプラチナブロンドの男性はきっと父親。
ドラコの外見は瞳以外は父親似なのか、とハリーを思い出した。
ハリーも父親にそっくりだと聞いた事がある。
ただ、ハリーもドラコも瞳は母親譲りらしい。
両親が離れたからかドラコが振り返り、此方に歩いてきた。
私には気付かないまま近くに来るドラコは学校で見るまま。
「こんばんは、ドラコ」
「え」
「ドラコ?」
驚いた顔のまま固まってしまったドラコの前で手を振ってみる。
ハッとしたように気付いたその顔はやっぱり驚きのまま。
それがなんだか面白くて顔を覗き込むと一歩二歩と後退る。
「名字…どうして此処に」
「お招きいただいたって事にしておくわ」
ドラコの眉を寄せた顔は見慣れているけれど、好きではない。
かと言って直接眉間に触るのは警戒されてしまうので自分の眉間を指す。
ふいっと瞳が伏せられたけれど、やっぱり皺はそのまま。
なんだか私の眉間に皺が寄ってしまいそうだ。
「名前!」
「シャロン、ご挨拶はもう良いの?」
「マルフォイと居るのが見えたから来たのよ」
「相変わらず騒々しいやつだ、オルコット」
「…名前、行くわよ」
「え?あ、また学校でね、ドラコ」
私の手を掴んだまま歩き出すシャロンに引かれながらドラコを振り返る。
けれど、俯いてしまって私からは表情は見えなかった。
(20121015)
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