試験の次の日舞い込んだハリー達の事には酷く驚いて、シャロンと双子とでお見舞いに行った。
そして、その日から私は殆どの時間を図書館で本を読んで過ごしている。
明日は帰る日になるけれど荷造りは夜の間にしているから心配ない。


あの日聞いた闇の帝王、つまりはヴォルデモート。
その名前に私は改めてもっと勉強しなくてはと思った。
大切な人達を守れるように色々な事を知っておかなければ。
呪文集や闇の魔術の本、防衛術の本を次から次へ読む。


本を閉じて伸びをすると背中が音を発した。
少し休憩しようと窓の外に向けると遠くで双子とリーが遊んでいるのが見える。
多分此処からは見えないけれどシャロンも一緒に遊んでいるのだろう。
今朝も図書館に行く私に眉を寄せながらも仕方ないと笑って許してくれた。
優しいシャロンと友達な私はとても幸せなのだと思う。


楽しそうな双子とリーを見ていたらコンコンと机を叩く音が聞こえた。
振り返るとドラコが立っていて、隣の席を指差す。


「どうぞ」


にこりともしないしいつものような表情も浮かんでいない。
他の席も空いているのに此処に来たのは何か用があるのだろう。
静かに本を開いたドラコから目を逸らして再び窓の外を見る。
今度はシャロンの姿も見えて、どうやらクィディッチを始めたらしい。
もしハリーが元気だったら参加していただろうか。


「ドラコは、クィディッチ好き?」

「ああ」

「来年選手になるの?」

「そのつもりだ」


後ろから聞こえるドラコの声にホッとする。
今日はどうやら会話をしてくれるらしい。
聞きたい事や話したい事はあるけれど何から話そうか。
まだ読んでいない本はあるけれど会話の方が魅力的。
ドラコを振り返ると開かれている本はそのままに此方を見ていた。
もしやずっと背中を見られていたのだろうか。


「僕は純血だ」

「知ってるわ。私はマグル出身ね」

「…ああ」

「でも、血はどうでも良いと思わない?」


私の言葉に薄い青色の瞳が細められる。
多分彼はどうも思わなくてそれでも少し話したいと思っていた事。
まだ幼いドラコなら少しだけでも考え方を変えられるかもしれない。
変えられなくても少しだけでも影響を与えられたら本望だ。
ドラコは本当は良い子なのだと思う。
凝り固まった純血思想に囲まれてしまった。
プライドも高い、所謂お坊ちゃま。


「血を誇るのは良い事だと思うけど、だからって違う者を排除は賛成出来ないわ」

「何を言って」

「じゃあドラコは説明出来る?どうして魔法族の血が尊いのか、マグル生まれの血が穢れているのか」

「それは…」

「それに、純血どうのと言うのなら私だって純血よ。マグルの純血」


ドラコは視線を彷徨わせ、顔を顰めて俯いてしまう。
思った通り、彼にはどうしてか説明は出来ない。
もしかしたら純血主義の誰かは説明が出来るかもしれないけれど。
膝の上で痛そうな位握られている手がドラコの気持ちを表している気がした。


「それでも僕は純血だ」

「そうね、確かにドラコは優秀だわ」


プラチナ・ブロンドに手を伸ばしてそっと撫でる。
オールバックにセットされた髪の毛が少し、乱れた。
覗き込むと薄い青色の瞳が揺れているのが解る。
まだ幼い彼には少し、酷だっただろうか。


「お前の言う事は僕には解らない」

「今はただ聞いてくれるだけで良いわ。困らせてしまってごめんなさい」


ふるふる、と首を振るドラコが今までで一番幼く見えた。




(20121015)
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