いよいよ最初のクィディッチの試合がやってきた。
チャーリーに借りたクィディッチ今昔を読み込んで私の知識は完璧。
それでも実際に試合を観るのは初めてでドキドキしていた。


大広間に入ると選手はもう出て行くところで、立ち上がっている。
私は慌てて駆け寄るとチャーリーが私に気付いて笑う。


「頑張ってね、チャーリー」

「任せろ!あ、名前」

「なぁに?」

「ビルと競技場に来ると良い」


屈んで私だけに聞こえる声でチャーリーがそう言ってニヤリと笑った。
驚いて顔を見るとチャーリーはウインクをしてそしてチームの皆と大広間を出て行く。
思いもしなかったチャーリーの言葉に呆然としていると私を呼ぶ声がする。
頭を切り替えたいところだけれどこの声ではそうもいかない。
何とか私は振り返り、私を呼んだビルの向かい側に腰を下ろす。


「おはよう、名前。顔が赤いけど、チャーリーが変な事でも言った?」

「え?いえ、何でもないの」


誤魔化すようにコーンフレークにミルクをかけて口へ運ぶ。
ビルの視線を感じながら、私はどう言い訳をしようか考える。
けれどビルはそれ以上は何も言わず話題を変えてくれた。


「今日はオルコットとは一緒じゃないの?」

「うん。良い席を取りたいからって張り切って出て行ったの」


成程、と頷いてビル広げていた新聞を折り畳む。
そしてビルは私が食べ終わると競技場まで一緒に行こうと言ってくれた。
勿論断るわけがなく、競技場までの道程を並んで歩く。
競技場に近付くにつれて熱気が凄く、そしてかなり賑わっていた。
私が波に飲まれそうになるとビルが引き戻してくれる。
やっとの事でシャロンを見つけ、ビルと二人でそこに座った。


「試合開始よ!」


シャロンが興奮して思い切り私の肩を叩く。
ぐらりと揺れた私の体はビルに支えられて元に戻る。
確かにその興奮はクィディッチを初めて見た私でも解った。
次から次へと展開していく試合についていくのに精一杯。
だから私はチャーリーが動いた事に気付かず、ビルに言われて気付く。


「スニッチを見つけたのかしら?」

「多分ね。ほら見てごらん」


ビルの指差した先を見ると太陽の光を浴びてキラリと光るスニッチが見えた。
チャーリーの後ろから相手のシーカーがぐんぐん追い上げている。
もう少しでぶつかってしまいそうなくらい近づいた時観客席が爆発した。
チャーリーの手にはしっかりスニッチが握られていてその手を高々と上げている。
その顔はキラキラ輝いていてとてもかっこよかった。


帰り道も人に飲まれそうになりながらもなんとか談話室に戻るとそこは既に大騒ぎ。
何事かと思ってしまうくらいの音量でグリフィンドールの合唱だった。
その中にはシャロンも居てとても私の事は気付いていない様子。
私は誰かに腕を引っ張られてビルと離れてしまい、気付けばその人ごみから吐き出されていた。
引っ張られた腕の痛みを感じながら隅のソファに座るとそこにはパーシーの姿がある。
私の姿を見て慌てて立ち上がろうとしたパーシーの服を咄嗟に掴む。


「ハイ、パーシー」

「…ハイ、名前」


この喧騒の中小さい声だったけれど確かに私の耳には届いた事に嬉しくなる。
返事をしてくれたという事はまだ話はしてくれるようだ。
離せと目で訴えられたけれど私は離す気は無い。
より力を込めればパーシーは小声で座るから、と呟いた。


「ごめんね、パーシー」

「え?」

「私はパーシーとも仲良くしたいし、弟と間違えられても平気よ」


パーシーが驚いた顔からバツの悪そうな顔になるから私は無理矢理手を握る。
仲直り、と言えばパーシーは今まで見た事の無い顔で笑ってくれた。


「名前!良かった。やっと見つけた。無事?」


ビルが人ごみを掻き分けてこちらへ向かってきて私を見ると笑顔になる。
無事だという事とパーシーと仲直りした事を伝えるとビルはとても嬉しそうに私とパーシーの頭を撫でた。




(20120625)
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