図書館で本を読んでいたら本に影が落ちる。
顔を上げるとドラコが腕を組んで立っていた。
「ハイ、ドラコ。勉強?座ったら?」
向かい側を指しながら言うとドラコは無言のまま座る。
再び本に視線を落とすけれど、どうも視線を感じて集中出来ない。
顔を上げるとやはり薄い青色の瞳が此方を見ていた。
「何で、僕に構う?」
「言ったじゃない。ドラコが好きだって」
「訳が解らない」
ドラコは眉を寄せてまた腕を組む。
私としては伝えた通りなのだけど、ドラコには理解し難いらしい。
純血一家でスリザリンな彼とマグル生まれでグリフィンドールの私。
昔からの敵対の理由は下らない内容なのに、それが生きている。
「名字、君の家はマグルだろう?」
「あら、解ったの?」
「ずっと知っていたさ」
はて、とドラコの言葉に首を傾げた。
ずっと知っていたならば何故私に何も言わなかったのだろう。
話してくれなくても構わないと思っていたのに。
そうなったとしても彼に話しかけるのを辞めるつもりは無いけれど。
「名前!マルフォイ、名前に近付くなよ」
「話の邪魔をするな、ウィーズリー」
「ロン、ドラコも図書館なんだから」
大声を出す二人を黙らせようと思ったら背後に気配を感じる。
慌てて振り返ると嫌な予感は的中してしまい、三人纏めて追い出されてしまった。
追い出された拍子に散らばった本を拾っていると手が二つ伸びてくる。
「ウィーズリー、何でもかんでも首を突っ込むのは辞めるんだな」
ドラコは本を私に差し出してロンを睨みつけた。
ロンもドラコを睨みつけていて今にも喧嘩になりそうな雰囲気。
急いで本を受け取るとドラコはローブを翻して去っていく。
「マルフォイには近付かない方が」
「ロン、ドラコがスリザリンだからって敵対心を持つのは辞めなさい」
「でもあいつは嫌なやつなんだよ!僕だけじゃなくてハリーやネビルにだって」
「そうね、やってる事は良くないわ」
ロンはどうしてもドラコが嫌いなようで私に本を押し付けると鼻息荒く去っていった。
一年生同士、私の知らないところで色々あるのだろう。
偶にドラコのしている事は聞いていたし仕方がないのかもしれない。
確かにドラコは傲慢だけれど、良いところだってある。
私をマグル生まれだと知りながら何も言わない一面もあるのだ。
溜息を吐いて鞄に本を押し込む。
「名前」
名前を呼ばれて顔を上げるとジョージが息を切らして此方を見ていた。
片手に羊皮紙を持っていて何か色々動いているのが見える。
一人で居るなんて珍しいなと思っていたらジョージが抱き付く。
しゃがんでいた私は廊下に座り込む事になってしまって、ひやりと冷える。
「名前、落ち込んでる?」
「少しね」
「ロンやマルフォイに何か言われた?」
「そうじゃないのよ。大丈夫」
私を抱き締めるジョージの背中を優しく叩くと私を離した。
落ち込んでいるのは私の筈なのに、まるでジョージが落ち込んでいるような顔。
「大丈夫よ」
綺麗な赤毛を撫でながら自分の気持ちも落ち着かせる。
(20121011)
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