何軒かお店を見て、勿論本屋さんも見て、カフェに入った。
ビルはマグルの本が気に入ったらしく、少しと言って読んでいる。
完結済みの小説をエジプトに持って帰るらしい。
サンドイッチを食べながらそんなビルを盗み見る。
背が高く、長い髪に整った顔立ち、綺麗で優しげな瞳。
好きという事を除いても歩いていて目を引く筈だ。
不意にその瞳が上を向き、バッチリと合う。


「穴が開いちゃうよ」

「え?あ、ごめんなさい」


クスクス笑いながら本をしまって紅茶を飲むビル。
俯いてサンドイッチをかじるけれど先程より味が解らない。
チラリとビルを見ると笑顔で此方を見ている。


「そういえば、手紙にあったドラコって?」

「ドラコはスリザリンの子なの。綺麗なプラチナ・ブロンドで、ちょっと素直じゃないけど」

「もしかして、マルフォイ?」

「そう、マルフォイ」


そう言うとビルは黙り込んで何か考え始めた。
やっぱりマルフォイは有名で、ビルにもドラコと仲良くするなと言われてしまうのだろうか。
実際シャロンも何も言わないけれどそう思っているし。


「会う機会があるか解らないけど、父親には注意しなきゃいけないよ。ドラコはまだ子供だから大丈夫だと思うけど」

「父親?」

「純血主義だからね」


やっぱり、と思わざるをえなかった。
ドラコは純血かとても気にしていたし。
となるといつかドラコにも言われてしまうのだろうか。
ハーマイオニーの事をそう呼ぶかもしれない。
考え込んでしまった私の頭にビルの手が乗っかった。


「名前が苛められてる訳じゃないんだろ?」

「うん」

「それなら僕は反対しないよ。仲良くするのは悪い事じゃない」


ビルがくしゃくしゃと頭を撫でてくれるだけで気持ちが軽くなる。
やっぱりビルは凄いとこういう時に思う。


帰り道もやはり手を繋いで歩いて来た。
色々と買ったけれどビルが例の呪文を掛けてとても軽い。
うっかりしていると買い過ぎてしまいそうだった。
買うと言っても大抵が本やブックカバーだったけれど。


夕食を食べて、後片付けを一緒にして今度は絵本に夢中になるビルの横でウトウトしていた。
ビルがページを捲る音が心地良くてとても落ち着く。
ふわふわした意識はうろうろと彷徨っている。
けれど、絵本を閉じたビルに頬を突つかれて体を起こす。


「眠い?」

「ん、ちょっとウトウトしてた」

「沢山歩いたからね」


頭を撫でられるとまたふわふわして来る。
寝ないように頑張りながらビルを見ると笑われてしまった。


「もう少し頑張ろうか。名前、プレゼント見ないの?」

「え?」


見上げている私の頭の上にビルがプレゼントを乗せる。
慌てて落ちないように手を伸ばすとそれが面白いのかビルが笑う。
丁寧に開けると中から出てきたのは呪文集だった。
パラパラ捲ると日常生活で使えそうな呪文が沢山載っている。


「有難うビル!これ、学校に戻ったら試したいのがいっぱい」

「良かった。じゃあ僕は帰るよ」

「あ、うん」


ビルが立ち上がってマフラーを巻く。
玄関まで一緒に歩いていくといきなり立ち止まって振り返る。
突然の事でぶつかりそうになってしまった私をビルの手が支えた。


「ゆっくり寝るんだよ」

「小さい子供じゃないわ」

「知ってる」


可笑しそうに笑っておやすみの言葉を残してビルは玄関から出て行く。
後を追って後ろ姿を見送ると、ビルが姿くらましする音が聞こえた。




(20121011)
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