「名前、決まった?」

「うーん…まだ」


私の手元に二種類のお菓子の詰め合わせ。ビルへの誕生日プレゼントは今年も悩まずにはいられない。
ハニーデュークスのお菓子が食べたいと手紙に書いてあったならそれにする事は簡単に決まった。
けれど、いざハニーデュークスに来たら詰め合わせをどちらにしようかで止まってしまう。


「フレッドとジョージにも買うんでしょう?」

「頼まれたんだもの」

「早く決めなきゃね。時間無くなっちゃうわよ?」


そう言いながらもシャロンは結局決めるまで付き合ってくれた。
次はゾンコに、漏れ鍋に、と話しながら歩くのは楽しい。




城に戻って来るとウッドに引っ張られていったシャロンと早々に別れる。
チャーリーとよく一緒に居たシャロンをウッドは気に入っていた。
あの様子だときっとずっとシャロンを探していたのだろう。
フレッドとジョージを探す為に歩き出すと一人で歩くドラコが目に入った。
急いで追い掛けながら名前を呼ぶと振り返ったドラコが目を見開く。


「良いところに。手を出して」


ドラコはジッと此方を見ただけで再び歩き出してしまう。
置いていかれないようにドラコの隣に並んで歩く。
何も言わないという事はまだ私の血筋を調べていないのだろうか。


「ドラコ、手出して」

「何するんだ」

「素直に手を出さないからよ。それはホグズミードのお土産」


立ち止まり、呆然としているドラコは可愛くて抱き締めたくなるけれど我慢。
とりあえず突き返されない事に安堵しながらドラコを見る。
薄い青色の瞳は手の中にあるチョコを見つめたまま動かない。


「僕に構うな」

「それは嫌」


断った私をドラコの青色の瞳がジッと見つめる。
笑顔で返すと不意に視線を逸らされてしまう。
やはり何度見てもプラチナ・ブロンドは綺麗で思わず手を伸ばす。
そっと触れると反射かのように動いたドラコの手に払われた。
そして何故かドラコが傷付いたような表情を浮かべる。


「僕はスリザリンだ。名字、君はグリフィンドールだろう」

「そんなの関係ないわ。だって、私はドラコが好きだもの」


グッと眉を寄せて何も言わずドラコは歩いていってしまった。
入れ代わるようにフレッドとジョージが向かいから歩いてくる。
私を見つけて手を振る二人に振り返した。
ドラコの消えた曲がり角をぼんやりと見つめる。


「嫌われちゃったかしら」

「誰に?」

「僕等は名前を嫌ったりしないさ。なあジョージ」

「勿論」


近くまで来ていた二人に気にするなと首を振ってゾンコのお土産を渡す。
中身を確認した二人は大喜びで、いつもより強めに抱き付いてきた。
ずっと城内に居たであろう二人の体は暖かい。
寒い中にいた私は冷たいだろうに、二人は更に腕に力を込める。
ドラコにも先程冷たい思いをさせてしまったかもしれない。


「冷たくない?冷えちゃうわよ」

「平気さ。でも、名前が風邪引くから談話室に行こう」


フレッドが私の手を取るのを見てジョージがもう片方の手を取る。
まるで子供のようだと思ったけれど暖かい手が心地良い。
談話室に着く頃にはきっと二人の手は冷えてしまうだろう。




(20121009)
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