魔法史の授業は相変わらずシャロンにとっては催眠術らしく、廊下に出ると直ぐに欠伸だった。
欠伸による涙を拭いながらぶつぶつ言うシャロンに笑っていたら視界にプラチナ・ブロンドが飛び込む。
あの子だ!と思ってシャロンを引っ張って近付くとシャロンは顔を顰めた。
プラチナ・ブロンドの彼は私達に気付き、ネクタイの色を見て眉を寄せる。
忘れていた訳ではないけれど私達はグリフィンドールで彼はスリザリン。
「オルコットじゃないか」
「…お久しぶりね」
「あらシャロン、知り合い?」
何の気なしに聞いたのだけどシャロンは信じられないという顔をした。
彼は私を見て一瞬きょとんとしてシャロンに目を向ける。
彼は気だるそうな話し方をしていて何処かで聞いたような声。
何処だったかと考えるけれど思い出すまであと一歩な気がする。
「知り合いも何も、貴方知ってるんじゃないの?」
「ずっと話したいとは思っていたわ。とっても綺麗なプラチナ・ブロンドなんだもの」
私の言葉にシャロンは頭を抱え、彼は頬が少し赤く染まった。
顔が青白いのはスリザリンの寮のせいだろうか。
けれど銀髪だった彼の父親も青白い彼をしていたから純粋に体質かもしれない。
「あ、私は名前・名字。名前って呼んで」
「…僕はドラコ・マルフォイだ」
「マルフォイ?あ、貴方がマルフォイ?」
何処かで聞いた声と話し方だと思っていた謎が解けた。
この間ハリーに話しかけていたのは彼だったらしい。
彼がマルフォイという事は彼の家もそういう思想の筈だ。
そしてそんな家で育った彼もまた、そうなのだろう。
純血かマグルか解らない私を警戒する目は薄い青色でとても綺麗。
「名字は聞いた事がない。純血か?」
「んー…ドラコは、どっちだと思う?」
「は?」
彼は恐らく予想もしていなかったのだろう。
シャロンも驚いた顔をしていて、正に今二人は同じ表情を浮かべている。
しかし、ドラコは気を取り直したらしくムッとした顔になった。
「ふざけるな」
「ふざけてないわ。ついでにからかってもないし。私の血筋が知りたいなら調べると良いわ。誰かに聞かずに自分でね」
「なんで僕がそんな事」
「ドラコ、ムッとしない方が良いわよ」
眉間の皺が深くなり、ドラコは黙って去っていく。
ドラコの姿が見えなくなると横から溜息が聞こえた。
シャロンが頭を抱えて小声で何かを言っている。
「まさかマルフォイを知らなかったなんて」
「名前は知ってたわ。顔も。結びついたのは今だけど」
私の言葉にもう一度シャロンは溜息を吐いた。
シャロンは純血だからきっとドラコの事も知っている筈。
ウィーズリー家の人達もきっと知っているだろう。
「マルフォイはスリザリンよ?」
「寮は関係ないわ。ドラコはドラコ」
シャロンは大きな大きな三度目の溜息を吐いた。
(20121007)
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