相変わらず魔法史の授業は苦手だ。
シャロンは早々に諦めているのか授業が始まるともう夢の中。
私はなんとか頑張ってノートは書いているけれどどう見てもミミズが這った後だった。
それをいつもいつも教科書を見ながら言葉に直していくのは骨が折れる。
寝なければ良い話なのだけどビンズ先生の声はやっぱり子守唄だった。


「よく寝たわ!」

「シャロン、偶には頑張って聞いてよ」

「無理よ。ビンズ先生の声って、子守唄なんだもの」


シャロンがビンズ先生の声を真似るので、思わず笑ってしまう。
ビンズ先生が知ったらなんて思うだろうと考えるけれど、どうも思いつかない。
やっぱり淡々と授業を進めるイメージしか無いのだ。


「そういえば名前、明日提出の魔法薬のレポートやった?」


シャロンに聞かれて思わずあの爆弾を思い出して顔が熱くなる。
あの時のレポートが正に明日提出の魔法薬のレポートだった。
顔の赤くなった私を見てシャロンはニヤニヤ笑い出す。


「ビルと何かあったの?」

「な、無いわ!いつもみたいにレポートを見て貰っただけよ」


先に大広間に行こうと歩き出すと後ろからシャロンが慌てて着いて来る。
ビルが落とした爆弾は二日経った今でも威力は衰えない。
授業中など不意に思い出しては緩む顔を我慢するのに必死だった。
頭の中を占拠している考えのせいで私はいきなり体に感じた衝撃に思い切り吹っ飛ぶ。


「名前!」


シャロンが慌てて駆け寄り私を起こして鞄も拾ってくれる。
吹っ飛んだ時に打ったらしく、左腕が痛みを訴えて涙が出そうだ。
幸い何処も切ってはいなくて血は出ていない。


「だ、大丈夫っ!?私ったらまたやっちゃったわ!しかも女の子なんて!」

「あ、あの、大丈夫です」


慌てふためいてる人は髪の毛が短くピンクでカナリアイエローのネクタイ。
どうやら上級生らしく、頻りにごめんねと大丈夫?を繰り返している。
私が止めてやっと落ち着いたのか冷静な声でもう一度謝った。


「大丈夫です。怪我も無かったし」

「良かった。あれ?君よくウィーズリーと居る子だね」

「え?」


一人でうんうん、と納得しているのを前に私は首を傾げる。
ビルやチャーリー、パーシーと居る時に見ただろうか。
何処かで会っているか一頻り思い出してみても思い出せなかった。


「あの」

「私はトンクス!チャーリー・ウィーズリーと同じ五年生だよ」

「名前・名字です」


差し出す前に手を取られてぶんぶんと振られる。
呆気に取られているシャロンにも同じ事をしてトンクスは去っていった。
よく解らないけれど、とても明るくて良い人そうに見える。
未だ呆然としているシャロンの腕を引いて大広間へと歩き出す。


「なんか、パワフルな人だったわね」

「うん。あ、名前怪我は本当に大丈夫?」

「大丈夫、何処も怪我してないよ」


腕はまだ少し痛んでいたけれど、大した事も無いだろうと放っておく事にした。




(20120624)
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