エジプトに戻るビルの手をしっかり握って何を言おうか考えているとビルの大きな手が頭を撫でる。
顔を上げると優しく笑って今生の別れじゃないんだからと言われてしまった。
それはそうなのだけれど、やっぱりビルがエジプトに言ってしまうのは寂しい。
毎回毎回この時間だけはどうも好きになれなかった。
手紙を書く約束をして暖炉からビルが消えるのを最後まで眺める。
溜息を吐いてソファーに座り込んだ私の横にチャーリーが座った。


「相変わらずだな」

「だって、ビルに会えないんだもの」


唇を尖らせた私が面白いのかチャーリーは笑いながら頭を撫でる。
今年からはチャーリーもホグワーツに居ないのだ。
きっとチャーリーの淹れる紅茶が恋しくなってしまう。
それに、チャーリーも今日ルーマニアに行く。


「名前、無理はするなよ」

「ビルにも言われたわ」

「だろうな。さてと、俺も行くよ」


立ち上がったチャーリーにモリーさんやジニーが挨拶を交わす。
順番に挨拶をしたチャーリーは私にウインクをして暖炉から消えた。
クッションを抱え込んで二つ目の溜息。
ジニーがくるりと振り返るのが見えた。


「名前」

「なあに、ジニー」

「名前ってビルが好きなのね」


ジニーの言葉に顔が一気に熱くなるのが解る。
隣に座ったジニーはにこにこと笑みを浮かべていてとても可愛らしい。


「私、名前とビルはお似合いだと思うわ!応援する!」

「あ、有難うジニー」

「そうはいかないぜジニー」


いきなり聞こえた声と回された腕に振り返るとフレッドが抱きついていた。
ジニーはきょとんとして首を傾げている。
そんな姿すら可愛く見えるのだからきっと将来モテる筈。
フレッドの後ろでジョージがそわそわとしているのが見えた。
何かあったのかと見ていると目が合って、その瞬間ジョージの肩が跳ねる。


「名前は人気だからな、ジョージ」


話を振られたジョージは曖昧に返事をした。
その態度ががどうもジョージらしくなく、不自然。
ジニーもそう思ったようで口を開いたけれど、それより早くジョージの手が私の手を掴む。
何を言う時間も与えられずそのまま手を引かれて庭に出て更に進んでいく。
いきなりジョージが立ち止まりぶつかってしまう。


「ごめんなさい、大丈夫?」


声を掛けてもジョージは何も言わなくて背中しか見えない。
どうもあの倒れた日からジョージは私に近付かず、さっと居なくなってしまう。
こうして連れ出されたという事は何かしら話すつもりかもしれない。
周りを見回すとあの日と同じ木の側で、今度は私がジョージの手を引いて連れて行く。
座らせても手を離そうとしないジョージの隣に私も座る。


「ジョージ?」


そっと名前を呼ぶと肩がビクッと跳ねた。
困ってしまって静かに息を吐く。
大丈夫だと伝わればと思って少し手に力を込める。
伝わったか解らないけれど、ジョージが顔を上げた。


「あのね、名前」

「なあに?」

「僕、気付けなくてごめん」


そう言ったきりまた俯いてしまったジョージ。
まだ気にしていたのは解っていたけれどここまでとは。
手を引いて倒れてきたジョージを抱き留める。
いきなり元気になったようにジョージは慌て出す。
抱き締めるのなんて初めてじゃないのに。
普段はジョージから抱き付いてくるのに、なんだか面白い。


「ジョージ、私気にしてないわ。私だって気付かなかったのよ」

「でも」

「寧ろ運んでくれて感謝してるの」


ピタリと動きが止まったジョージを離そうとすると、逆に抱き締められる。
肩に乗っている赤毛を撫でると抱き締められている腕に力が入った。


「私、いつもの笑ってるジョージが好きよ」


言葉はなかったけれど、ジョージが頷いたのは解る。
遠くから箒で飛んでくるフレッドが見えた。




(20121006)
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