夕食後、四年生の基本呪文集を読んでいたら賑やかな声が聞こえてきた。
何だろうと顔を上げるとロンが慌てて此方に走ってきてその後ろにはフレッドとジョージ。


「名前、助けて」

「名前に助けを求めるなんて卑怯だぞロニィ!」


訳が解らなくて首を傾げながらもとりあえずロンを隣に座らせてフレッドとジョージを見上げる。
二人ともチラチラと私とロンを交互に見ているだけ。
何も言おうとしない三人に溜息を吐いてフレッドとジョージの名前を呼んだ。


「ロンに悪戯?」

「違うよ名前。僕等ロンと遊ぼうと思って」

「そうだよ。悪戯なんてとんでもない」

「ロンをからかうのも辞めなさい。二人とも、モリーさんが呼んでるわよ」


恐らく二人が階段に何か仕掛けたのだろう。
階段の上の方から二人を呼ぶ声がして二人を渋々上がっていった。
呪文集を閉じてロンを見ればホッとしたように息を吐く。


「大丈夫?」

「う、うん…あの、その、有難う」

「どう致しまして」


一瞬目が合ったのだけれどやはりぷいっと逸らされてしまう。
そんなロンの視線を追い掛けるように覗き込めば顔が赤く染まった。


「ねえ、ロン。私はロンとも仲良くしたいんだけど」

「勿論!でも…名前は、いつもビルやフレッドとジョージと、居るから」


段々小声になっていくロンは顔が真っ赤なまま階段を登って行く。
呆気に取られたままの私はただそんな後ろ姿を眺める。
落ち着いてロンの言葉を考えるととりあえず仲良くはしてくれるらしい。
そんな時暖炉に緑色の炎が見えて灰を叩きながらビルが出てきた。


「ただいま。名前しか居ないの?」


そう言った後にぼんやりしていた私を覗き込んでビルはどうしたの?と首を傾げる。
いきなりのビルのアップに驚いて私の手から呪文集が零れ落ちてビルの足の上に落ちた。
痛みに蹲るビルの横にへたり込んで慌てて謝るとビルの大きな手が頭を撫でる。


「驚かせちゃったみたいで、ごめん」

「平気。私こそ、考え事していて」

「悩み事?」


ビルの質問に応えようとした時再び緑色の炎が見えて中からアーサーさんが出てきた。
床に座り込む私達を見てアーサーさんは不思議そうな顔をしながらも微笑む。
立ち上がったビルに続いて立ち上がるとビルが呪文集を差し出してくれた。
申し訳なく思いながらそれを受け取る。


「あの、お帰りなさい、ビル」

「うん、ただいま」


もう一度私を撫でたビルはキッチンに向かった。
私も後を着いていって向かい側に座る。
アーサーさんにモリーさんがダイアゴン横丁の話をするのを聞きながらまた呪文集を開いた。


「名前はもう勉強かい?」

「フレッドとジョージも少し見習って欲しいわ」

「僕は頑張りすぎだと思うけどね」


にこやかなアーサーさんとモリーさんと、ニッコリと笑うビル。
ビルと目が合って私は静かに呪文集を閉じた。




(20121005)
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