知らされた時間に待っていた所に現れたのはビルで、驚く私と手を繋いで姿くらましをした。
そして連れてこられたのはやっぱり隠れ穴で、見つけたのはニヤリと笑うチャーリー。
実践しなくても良いのにという気持ちを睨みつけてもヘラヘラ笑うだけだった。


いつものように荷物をジニーの部屋に置いてビルの部屋に入る。
去年より本棚の本が少ない事に気付いて思わず近付く。
タイトルを指で追っているとビルが一冊を取り出した。


「これ、名前が好きそうだと思って残しておいたんだ。気に入ったら持ってって良いよ」

「本当に?有難う」


表紙を捲ると今すぐにでも読みたくなる。
それを我慢してひとまず机に置くと笑っているビルと目が合う。
ドキドキし出す心臓もいつも通りで誤魔化すようにビルの胸に軽く拳を突きつける。
その手を大きな手に包まれてもう片方の手が頭を撫でた。


「名前、また背が伸びた」

「うん。また少しビルに近付いたわ」

「まだ大きくなるつもり?」

「多分もう伸びない」


ふわり、笑って引き寄せられる。いきなりの事で驚いて状況を理解した時は頭が真っ白。
背中にビルの腕があって、相変わらず頭を撫でる大きな手。
初めて抱き締められたこの状況に何も考えられない。


「一年間頑張ったね」

「う、うん」


ポンポンと背中を優しく叩かれてビルが離れる。
顔が真っ赤な事は既に解っていたので隠すように俯く。
ドキドキして困ってしまうけれど、でも心地良い。
誤魔化すように本を取るとビルは椅子を出してくれた。
柔らかい椅子に座るとビルも本を取り出したので私も本を開く。




遠くで人の声がしてゆったりと目を開くと空が赤い。
体からずり落ちたブランケットに気付く。
目を擦って部屋を見渡してもビルの姿は無く私一人。
読みかけだった本は机の上に置かれていてブックマーカーが挟まれている。
私の持っている物と似ているけれど、多分これはビルの物。
先程聞こえたのはどうやら下からのフレッドとジョージの声。
ブランケットを畳んで本の横に置いた時、ドアが開いた。


「名前、起きてたのね。ご飯なのだけど、下で食べる?疲れてるなら持ってくるわよ」

「あ、下に行きます」

「そう?じゃあ待ってるわ」


モリーさんは微笑んでドアの外に消えていく。
本をどうしようか悩んでそのままにビルの部屋を出て階段を降りる。
チャーリーとフレッドとジョージ、パーシーはもう居なかった。
紅茶を飲みながら何かを書いているビルが顔を上げてふわりと笑う。
ビルの隣に座るとモリーさんがスープを出してくれた。
モリーさんにお礼を言って一口飲むとロンと目が合う。
笑いかけたけれど目を逸らされてしまった。


「よく眠れた?」

「起こしてくれれば良いのに」

「疲れてるかと思って」


そう言って微笑まれてしまってはやっぱり文句は言えない。
疲れている訳ではなく、ただ前日余り眠れなかっただけで。
羽根ペンを置いたビルが書いていたのは手紙らしく、ビルの側に居たチェシャーの足に括り付ける。
チェシャーがいつ着いたか解らないけれど、相変わらずビルの事が好きらしい。
ビルの指を甘噛みして暗い空の中に消えていく影を眺める。


「ねえ、ビル。チェスやろうよ」

「良いよ。持っておいで」


パッと笑顔になったロンは食器をモリーさんに渡して階段を登っていく。
そしてチェスを手に戻って来るとビルの向かい側に嬉しそうに座った。




(20120925)
69
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -