廊下を歩いていると爽やかな風が吹いてくる。
すっかり夏が近くなってきた証だろう。
図書館も今年はもう最後だろうと全ての本を返してきた。
あとは帰る為に荷作りを進めなければいけない。
明日はもう学年末のパーティーがある。
チャーリーとホグワーツで過ごす最後の日。
頼れてそれでも一緒にはしゃぐ事の出来るチャーリーの卒業は寂しい。
ルーマニアに行くチャーリーを応援する気持ちは本物なのだけど。


「おい、お前名字じゃないか?」


感傷に浸っている私の耳に届いた声は記憶の隅にあるあまり聞きたくない声。
上から人を見下すような声に振り返るといつかのあのスリザリン生が立っていた。
相変わらず私を蔑むような目は変わらず、ニヤニヤと笑っている。


「今日は守ってくれるヤツも居ないな?仲間から外されたか?」

「何かご用ですか?」

「俺は明日で卒業だ。あのウィーズリーもだな。これでお前を守ってくれるヤツは居なくなる」


意地悪く唇の端を釣り上げて笑う。
以前はビル達の事を悪く言われて失神呪文をかけてしまった相手。
今度は無意識にでも爆発してしまう訳にはいかない。
それに、今はもう以前までの私ではないのだ。


「それとも、あの双子が守ってくれるか?血を裏切るヤツ」

「先輩、言っておきますけど、私は守られるだけのお姫様じゃないんですよ。それは先輩が一番解ってるでしょう?」


口の端がひくりと動いたという事は覚えているのだろう。
杖は向けないけれどいつでも向けられるようにはする。
狡猾な、純血を尊ぶスリザリン生。
一応目の前に立つ人は上級生であるのだ。


「あんなのまぐれ当たりだろう?穢れた血が」

「血統を誇るのは構いませんけど、それを押し付けないで下さい」

「生意気だぞ!」


カッとなった彼は案の定杖を取り出した。
単純というか、解りやすいというか。
仕方なく私も杖を持って相手へと向ける。
しかし、飛び出してきた影が間に入り相手が見えなくなった。
視界に入ったのは赤毛が二つ。


「名前に構うな」

「ふん、やっぱり来たな。マグル贔屓のウィーズリー。上級生に失礼な態度だ。そこの穢れた血と仲良しでマナーも忘れたのか?」

「名前をそんな風に呼ぶな!」

「フレッド、ジョージ、下がってて。血統を誇るところまでは尊敬出来ますよ、先輩」


フレッドとジョージを下がらせてスリザリン生に向かって呪文を唱える。
見事に足に当たり、彼の意志とは反対にスリザリン寮まで行く筈だ。
未だ飛びかかってしまいそうな二人の手を取ってグリフィンドール塔へと歩き出す。
二人ともきっとらしくない顔をしているのだろう。
引っ張らないと歩いてくれない気がした。


「名前」

「なぁに、フレッド」

「名前は優秀な魔女だよ」

「そうだよ。優秀な魔女だ」

「気にしてないわ」


引っ張っていた筈の腕を逆に引っ張られて気付けば二人の腕の中。
肩に乗った二つの頭を順番に撫でると腕の力が強くなった。




(20120924)
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