試験が終わって図書館からの帰り道だった。
不意に聞こえてきた名前に足を止める。
辺りを見渡すと見慣れた姿を見つけた。
声をかけようとしたけれど再び聞こえた声に踏みとどまる。
もしかしてもしかしなくても十中八九そういう現場。
しまった、という気まずい思いで鞄を抱える。
回れ右をして足音を立てないように歩き出す。
遠回りだけれど、鉢合わせるよりは良い。
そういえばビルが告白されていたのもあの場所だ。
私が知らないだけであの場所はそういう定番の場所かもしれない。
「名前ー!」
「一緒にやろう!」
不意に掛けられた声に驚いたけれど、其方を見て表情は緩む。
シャロンとフレッドとジョージの三人が箒を持って手を振っている。
手を振り返して近寄るとジョージが持っていた箒を渡された。
「何をやるの?」
「二対二のクィディッチよ。チャーリーを誘おうと思ったんだけど、何処かに行っちゃって」
チャーリーという言葉に思わず肩が揺れる。
けれど、シャロンとフレッドは既に話し込んでいた。
ふぅ、と息を吐いて顔を上げるとジョージと目が合う。
「名前、何かあった?」
「ううん、何もないわ。それより、置いて行かれちゃうわ」
シャロンとフレッドの方を指で指すとジョージの口があ、と開く。
ジョージの手を引いて二人を追いかける。
案の定私は三人よりも下手くそでシャロンとフレッドにどんどん点を取られていく。
フラフラと飛ぶ私にジョージが声をかけてくれるけれどそれだけでは補えない。
また点数を取られてしまい、シャロンとフレッドはハイタッチをしていた。
ジョージが休憩を提案する声にいち早く観客席に降りて落ち着く為に深く深く息を吐く。
隣にふわりと着地をしたジョージが座った。
「名前、疲れた?」
「少しね。ジョージも飛びたかったら飛んで良いのよ」
まだ飛んでいるシャロンとフレッドを見ながら言うとジョージは首を横に振る。
私に遠慮する事なんてないのにと思うけれど彼は箒を手に取ろうとしない。
二人が飛んでいるのを眺めながら前にもこんな事があったな、と思い出す。
あの時はビルが隣に居て飛んでいるのはシャロンとチャーリーだった。
今は横にジョージが居てシャロンとフレッドが飛んでいる。
「楽しそう」
「名前は飛ぶの楽しくない?」
「楽しいわよ。でも、久しぶりに飛ぶと駄目ね」
いきなりぎゅっと抱き締められたと思ったら香る太陽の匂い。
ジョージに思い切り抱き締められていてその顔は面白そうに笑っている。
赤毛が頬に当たり擽ったくて私の頬も緩む。
「擽ったいわ、ジョージ」
「名前は駄目なんかじゃないよ。僕等と対等に出来たら今頃名前はチームに勧誘されてるよ」
「それはまあ…そうね」
笑い合った瞬間に箒が突っ込んできてフレッドとジョージが喧嘩をし始める。
私は私でシャロンが飛んできてそのままの勢いで抱き付いてくるのを受け止めるのに精一杯だった。
(20120924)
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