図書館の帰り道、校庭を行き交う陰に気付いて何気なく外に出てみた。
誰だろうと見上げてみるとピンクの髪の毛が見えて直ぐに思い浮かぶ。
近くにあったベンチに座って図書館で借りてきた本を開いた。
流し読みをしながらレポートに使えそうな部分をチェックしていく。
するといきなり影が出来て顔を上げれば笑顔のトンクスが立っていた。
先程はピンクだった髪が今は綺麗なブロンドになっている。
立ち上がり、トンクスと並んで歩き出す間に今度は髪が真っ赤になった。


「トンクス、飛ぶの好きなの?」

「うん。自由に飛べるうちに飛んでおこうと思ってね」

「え?」

「私、闇払いになりたいんだ。試験次第だけど」


闇払い、と聞いてドキッと心臓が鳴る。
闇払いという事は、そういう事なのだ。
グッと浮かんだ不安を押し込んでトンクスの話に耳を傾ける。
闇払いになるには訓練が必要で、なかなか自由に飛べないらしい。


「闇払いって、なるの大変かしら」

「大変だよ。狭き門ってやつ」


闇払いならもしもの時皆を守れるだけの知識も実力も付く。
けれど私は闇払いとして働きたい訳ではないし。
知識と実力を備えられたら私はそれだけで良いのだ。


「名前は、卒業したらグリンゴッツ?」

「え?なんで?」

「だって、名前はウィーズリー…ビルの事が好きなんでしょ?」


勢い良く一気に顔に熱が集まっていくのを感じる。
これじゃあ答えなくても肯定しているようなものだ。
トンクスはニヤニヤと笑い出してやっぱりねと呟く。
トンクスに話した覚えは無いけれど、何故知っているのだろう。
もしかしたら私は解りやすいのだろうか。
確かにビルと居る時は顔が緩んでいる自覚はある。


「この間の春休み見たんだ。手を繋いでて良い雰囲気だったから声掛けなかったけど。邪魔しちゃ悪いし」

「トンクス…私とビルはそんな関係じゃないのよ」

「そうなの?」


トンクスの目が輝いて、そこから別れるまで質問攻めだった。
別にトンクスになら知られて困りはしない。
けれど、普段自分の中にあるビルの事を話すのはなんだか恥ずかしかった。
小さく息を吐いて談話室に入るとパーシーとウッドが目に入る。
やっぱり並んで課題をやっていてなんだか嬉しい。


珍しくシャロンが一人でレポートをやっている隣に座る。
教科書を見るとどうやら魔法生物飼育学のようだ。


「お帰りなさい、名前」

「ただいま。チャーリーと一緒じゃないのね」

「恋人じゃないんだもの、四六時中一緒な訳じゃないわよ」


クスクスと笑って教科書を捲るシャロン。
確かに二人は恋人じゃないけれどよく一緒に居る。
チャーリーにシャロンの居場所を聞かれる事も一度や二度じゃない。


「シャロンはチャーリーが好きじゃないの?」

「ビルと名前みたいな関係じゃないわよ?」


そう言ってシャロンはニヤッと悪戯に笑う。
今日はビルの事がよく話題に出る日だ。
ビルに会いたくなってしまう。
勘弁して、と俯いた私の頭をシャロンは優しく撫でてくれた。




(20120919)
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