誰も居ないであろう時間まで待って談話室に降りるとビルからの手紙を開く。
前半はいつもの当たり障りのない内容だったけれど後半からが本題。
近代魔法史で出てきた二人の名前についての事。


読み進めていけばいく程気分は降下していく。
私が本当に小さい時に起きた不思議な事件を思い出す。
外傷もなく病気でもないけれど亡くなっていた家族。
あの事件はきっと魔法使いの、闇の魔法使いの仕業だ。


読み終わって膝の上に広がったままの手紙をぼんやり眺める。
ヴォルデモートが生死不明、という言葉がぐるぐる頭を回って離れない。
もし生きていて、いつかビルやウィーズリー家の皆に危害が加わったら。
耐えられなくなって膝を抱え込む。
誰も居ない談話室で良かった。
大きく息を吐いて手紙を綺麗に封筒に戻す。


カタン、と音がしてそちらを振り向けば赤毛が二つ。
談話室の入口から入ってきたという事はまた寮を抜け出していたのだろう。
二人は私を見つけて笑顔を浮かべ、隣に座る。
気付かれないようにこっそりとビルの手紙を隠す。


「あれ?名前、課題やってたんじゃないの?」

「え?」

「本当だ。課題やってないなら…眠れなかった?」

「僕等を待ってた?」


首を傾げて両側から覗き込む顔を見ていたら、先程考えていた事が蘇ってきて思わず二人を抱き締める。
しっかりと、存在を確かめるように強く。
戸惑っている二人には申し訳ないけれど今は何も言えそうにない。
ふわりと一つの手が頭を撫でてもう一つの手は背中をポンポンと優しく叩く。


「ジョージ、準備は良いかい?」

「勿論さ、フレッド」


二人はぎゅっと一度抱き返して私から離れた。
そう思ったのも一瞬で目の前に沢山の赤と黄色の小さな花。
両手に沢山、抱えきれない程に沢山。
その花の先に笑顔のフレッドとジョージが見える。
けれど、次の瞬間私を見ていた二人がいきなり慌てだした。


「名前、どうしたの?」

「ごめん、この花嫌いだった?」


大慌てでフレッドがあちこちを探り出して、ジョージは指で私の目の辺りを拭う。
そこで私は初めて自分が泣いている事に気付いた。
自覚出来れば泣き止まなくては、と泣き止む努力をする。


「ごめんなさい。嫌いな訳じゃないのよ。嬉しかったの」

「本当に?」

「遠慮しないでよ」

「本当よ、有難う」


笑顔で答えた私に安心したように二人が笑う。
くよくよ悩んでいたって仕方がなくて、私に出来る事がある筈。
もしその時が来てもちゃんと大切な人達を守れるように。




(20120916)
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