クィディッチの練習が終わるとチャーリーが観客席まで飛んできてそのまま着地した。
そしてさっきはごめんなんて謝るから私は慌てて否定する。
そんな私を見てチャーリーは笑って、もう一度ごめんと呟いた。


「試合を観ればきっと名前もクィディッチが好きになるよ」

「観るのが楽しみ」

「楽しみにしてろよ!」

「応援するわ」


ピッチの方からチャーリーを呼ぶ声がして、それに答えるように飛んでいく。
あんな上手く飛べたら楽しいだろうなぁと思う。
飛行訓練はあるものの、私は三分宙に浮いていられたら良い方だった。
もし時間があるのならチャーリーに教えて貰えるように頼んでみよう。




城に戻る途中スプラウト先生に呼び止められたシャロンと別れて寮への道を歩く。
階段を登っているといきなり階段が動いてしまい、私は手摺りにしがみついた。
気まぐれな階段の気まぐれに当たってしまったらしい。


とりあえず登りきってしまうとそこは一度も来た事の無い廊下。
キョロキョロと周りを見回してみても廊下には人気は無かった。
気まぐれな階段が気を変えてくれるまで待つか、違う道を探すか。
考えて居るといきなり影が出来たので振り返る。


「ハイ、パーシー」

「何を突っ立っているんだ」


眉を寄せて立っていたパーシーの手には本。
きっと勉強をしていたのだろう。
日曜日だというのにやはり彼は勤勉だ。


「寮に戻りたいんだけど、階段が動いちゃって」

「しょうがない。一緒に行こう」


そう言って歩き出したパーシーの隣に並ぶ。
彼は話題を振ってくれないので本について尋ねるとレポートだと答えた。
そして終わってしまった会話にどうしようかと思考を巡らせる。


「名前」

「え?はい?」


いきなり呼ばれた名前に驚きながらも返事をしたらまたパーシーが眉を寄せた。
そりゃあ隣に居るのに話しかけて驚かれたら怪訝にも思うだろう。
パーシーは相変わらず眉を寄せた顔だけれど気にしない事に決めたらしい。


「よく談話室で課題をやっているのを見かけるけど、順調かい?」

「うん。偶にビルが見てくれるの」

「…そうか」


パーシーはぎゅっと口を閉じたかと思うとまた開いた。
けれど何かを言葉にする事はなくまた閉じられてしまう。
その動作が不思議で顔を眺めているとそれに気付いて逸らされてしまった。
少しだけ、ほんの少しだけ芽生えた悪戯心からパーシーの脇腹を軽くつつく。


「フレッド!ジョージ!いい加減に…あ」


ほんの悪戯心だったのに思いの外大声で返された。
それに私の名前はフレッドでもなければジョージでもない。
パーシーはしまったという顔をして視線を彷徨わせる。


「あの、パーシー」

「すまない。僕は失礼する」

「え?あの、パーシー!」


私が呼ぶのも無視をしてパーシーはあっという間に居なくなってしまった。
残された私は寮への道も解らずパーシーの行動も解らず一人ぼっち。
仕方ないので適当に歩こうと足を動かした時マクゴナガル先生を見つけて私はすぐさま声を掛けた。




(20120624)
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