いつものように談話室には私一人で羽根ペンの音と教科書を捲る音だけ。
少し前にチャーリーが部屋へ登って行った。
終わりを纏めたレポートをざっと眺めて杖を振る。
チャーリーが淹れてくれた紅茶の残りを飲みながら窓の外を見た。
曇っているようで全く星が見えない。
明日は休みだけれど天気は良くはならなさそうだ。


「名前?」


不意に聞こえた声に振り向けばジョージが階段の側に立っている。
起きて直ぐ降りてきたらしく、目を軽く擦りながら横に座った。


「課題?」

「そうよ。仕上げちゃいたくて」

「名前は、頑張りすぎだと思うよ」


目が半分しか開いていないジョージがぽつりと言う。
一年生の時からいつもビルに言われていた言葉。
流石は兄弟だなぁ、と一人で苦笑い。
ことり、と私の肩に乗ったジョージの頭を撫でる。
短い毛には寝癖がついていて、直すように指で梳く。


「名前は、どうしてそんなに頑張るの?」

「ビルみたいになりたいの」

「首席?そんなの、名前はならなくてもいーのに」


段々小さくなっていく声にジョージの顔を覗き込むとすっかり夢の中。
杖を振って毛布をかけると本に手を伸ばした。
明日はお休みだし別に朝まで起きていても問題ない。




ハッとして目が覚めた私の体には毛布がかけられている。
読んでいた筈の本が机に置いてあり、ブックマーカーが挟まれていないようだ。
これではページを探さなければならない。
頭の下にある物は何だろう、と首を回すとジョージが居た。
ジョージの手にはビルから貰ったあのブックマーカー。
雲が無くなったらしい窓から入り込む光にキラキラと光っている。


「綺麗でしょ」

「名前…起きたんだ」

「うん」


頭の下にあったのはジョージの足で、私はゆっくり体を起こす。
あの後自分で淹れ直した冷めてしまった紅茶を飲む。
やっぱり紅茶はチャーリーが淹れてくれたのが一番。
未だジョージはキラキラ光るブックマーカーを眺めている。


「これ、どうしたの?」

「ビルに貰ったの」

「ふぅん」


ジョージはそれ以外何も言わず本の上にそれを置いた。
それから私をジッと見つめたと思ったら視線を逸らす。
何回か繰り返してジョージは私の手を両手で包み込んだ。


「ジョージ?」

「僕寝るよ」

「じゃあ、私も部屋に戻るわ」


私が荷物を纏めるのを待っていたジョージと階段でおやすみを言い合う。
もしかしたらジョージは何か悩みがあるのかもしれない。
フレッドと悪戯ばかりをしているけれど、それだけじゃない筈。
毎日を過ごして居ればきっと悩みの一つや二つも出てくるだろう。
そう考えていると後ろからジョージが私を呼んだ。


「どうしたの?」

「何でもない」

「変なジョージ」

「おやすみ、名前」

「おやすみなさい」


今度はジョージが階段を登り始めるのを確認する。
明日の朝、フレッドとジョージに会ったらジョージに一番に挨拶をしよう。




(20120907)
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