三度目となるハロウィンを無事に終えてこれまた三度目となるカタログと睨めっこを終えた私は小さくなる影を見ながらビルを思い出していた。
いつも手紙の中に書かれているのは心配する言葉や褒めてくれる言葉。
とにかくビルは優しくて手紙を読む度に元気を貰って日々の授業が頑張れる。
けれど、偶にこうしてとてつもなく会いたくなってビルを想う。
会いたくて仕方無い気持ちを吐き出すように息を吐くと梟小屋を出る。


大広間に入るとシャロンが手を振っていて隣に座った。
今日はなんとなく紅茶を選んでカップに注ぐ。


「出してきたの?」

「うん」

「フレッドとジョージが探してたわ。名前は何処だって。試合前に会いたかったみたいよ」

「あら、悪い事をしちゃったわ」


トーストにストロベリージャムを塗りながらもあんまり食べる気がしない。
こういう気分の時はどうも駄目なようでトーストを置いて紅茶を飲む。
少しだけかじって見るけれどやっぱりスムーズに続かないような気がした。
ふとシャロンの手が重なって顔を上げるといつもと違う表情のシャロン。


「名前、貴女ビルの事考えてるわね?」

「え?」

「これでも貴女の親友のつもりよ?トーストよりこっちの方が良いわ」


そう言ってシャロンが差し出したのはコーンフレークにヨーグルトをかけたもの。
代わりに、と私の食べかけのトーストを食べ始めたシャロンにぎゅっと抱きつく。
小さい声で私も親友だと伝えると人差し指で額をつつかれた。




天気が味方をしたのか良い天気で青空の中で赤いユニフォームが映える。
グリフィンドールカラーの旗を振って声援を送る中で私は気が気じゃなかった。
フレッドとジョージのビーターとしての初試合。
ブラッジャーを打ち返す二人は息がピッタリで素晴らしい。
シャロンが興奮して叫ぶのを聞きながら隣に座るパーシーの腕を掴む。
チャーリーが加速するのが見えてその近くでフレッドがブラッジャーを打ち返す。


「取りました!チャーリー・ウィーズリーがスニッチを取りました!」


グリフィンドールの観客席から爆発したような歓声が上がった。
ホッとしてパーシーの腕を離すとくっきり私の指の痕が見える。


「あぁ、ごめんなさいパーシー!」

「大丈夫だよ、名前。グリフィンドールが勝ったんだ。これ位何でもない」


微笑むパーシーは自分で呪文を唱えると痕を消した。
生徒の波に押されるように観客席を出ると目の前がいきなり真っ赤に染まる。
再び景色が見えた時はグリフィンドール生に囲まれるチャーリーが見えた。
そして私にいつものように抱き付くフレッドとジョージ。


「二人とも凄かったわ」

「名前が応援してくれたからさ」


フレッドはそう言うと一度ぎゅっと力を込めて騒いでいるグリフィンドール生の方へ走っていく。
まだ抱き付いたままのジョージの頭を撫でると腕に力が入った。
遠くでチャーリーに思い切りシャロンが抱き付くのが見える。


「ジョージ?」

「名前、心配してくれて有難う」

「怪我しなくて良かったわ。おめでとう」


嬉しそうに頷くジョージにそのまま手を引かれてグリフィンドール生の輪に向かう。
誰かがパーティーだ!と言ったのに合わせて皆で移動を始める。
未だ囲まれているチャーリーにお祝いを言うのはもう少し後になるだろう。




(20120901)
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