ぐったりとソファーに座り込む私の横に座ったチャーリーが紅茶を差し出す。
受け取って一口飲むとストレートでも甘くて私の疲れを癒してくれるようだった。
これも、と押し付けられたチョコレートをかじりながら紅茶を飲む。
くしゃくしゃと頭を撫でられるままにしている私にチャーリーは苦笑い。
「大丈夫か?」
「慣れるまでの辛抱よ」
授業が始まると授業でとても忙しくて頭がこんがらがりそうだった。
ビルに貰った手帳はとても役に立つ。
なんとか授業に出られるのもビルの手帳のお陰。
机の上に置いてある手帳をぼんやり見ながらチョコレートをかじる。
「明日の選抜見に来るんだろ?」
「明日?あ、そうだわ!忘れるところだった!」
「フレッドもジョージも拗ねるぞ」
「チャーリーも頑張ってね」
「俺は見るだけさ」
ニッと笑ってチャーリーは羽根ペンに手を伸ばす。
チャーリーのレポートを見ながらチョコレートをかじる。
七年生の内容だけれどビルのレポートを見ていたからか見覚えがあった。
邪魔をするのも嫌なので本を読もうと手を伸ばす。
けれどその手はがっしりと掴まれてしまった。
「名前、今日はもう本を読むのは辞めよう」
「明日僕達の選抜見に来てくれなきゃ困るからね」
「教科書じゃないのよ、フレッド」
「僕には呪文集に見えるけど?」
反論の言葉が出ない私に満足したらしく二人は隣に座った。
手持ち無沙汰でチョコレートをちょっとずつかじる。
フレッドが魔法で紙飛行機を飛ばしているのにこっそり杖を向けた。
呪文を頭の中で幾つか思い浮かべて一つに決めると杖を振る。
紙飛行機は羽根が生えて白い鳩に変わった。
成功した事に満足して紅茶を飲むと二人が騒ぎ出す。
「フレッド何かしたか?」
「してないさ。誰かが鳩に変えたんだ」
「誰かって」
ジョージが私を見るので笑顔を返すとその顔が輝く。
ジョージが小声で何か言うとフレッドの顔も同じように輝いた。
「名前がやったのかい?」
「完璧な鳩だよ!」
騒ぎ出した二人に何事かと皆が集まりあっという間に談話室の真ん中へと去っていく。
溜息を吐いてチョコレートをかじるとチャーリーがジッと此方を見ていた。
笑顔を返すとチャーリーは何も言わずくしゃくしゃと頭を撫でる。
雨続きだったのが綺麗に晴れたクィディッチ競技場。
キーパー、チェイサーの選抜が終わって今はビーターの番。
何人か居るけれどやはりウィーズリー家の赤毛は目立つ。
チャーリーもフレッドもジョージも何処にいるか直ぐ解る。
「双子だから、息はピッタリよね。あとはやる気だけど」
「フレッドもジョージもクィディッチは好きよ」
「名前の応援があればもっと頑張るかもしれないわ」
「そうかしら?」
そうよとウインクをするシャロンから競技場に目を戻す。
フレッドとジョージがビュンビュン飛び回っていた。
あの二人が飛ぶのが上手なのは充分知っている。
それでもやっぱり見てる側としては緊張だってするのだ。
本人達には会っていないので解らないけれど緊張はしていないように見える。
私の方がすっかり緊張してしまって二人が地上に降り立つのを見てやっと息を吐いた。
チャーリーが全員に何かを言うと二人が箒に乗って真っ先に此方へ飛んでくる。
ぼんやりして居た訳では無いのに二人に笑顔で抱きつかれて凄く驚いた。
シャロンが苦笑いをしているのが見える。
「名前!僕達やったよ!」
「グリフィンドールのビーターだ!」
両方で交代に聞こえた言葉に私は思い切り二人を抱きしめた。
(20120901)
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