「私、今年の夏休みは来てくれないかと思ったわ」

「来ない予定だったんだけどね」


荷造りを眺めながらジニーが言うのに私は苦笑いをする。
新学期までの五日間、隠れ穴に居たのだけれどジニーに会えた事は確かに嬉しい。
ロンは相変わらずチェスの時以外は話してくれなかったけれど。
教科書をトランクに入れながらぼんやりと鞄の事を思い出す。
ビルがまた呪文をかけてくれて大半の教科書はまだそこに入っている。


「私も早く、ホグワーツに行きたい」

「ジニーは再来年ね」

「まだ二年もある」


ジニーはしゅんとしてベッドの上でクッションを抱えた。
隣に座ってジニーの頭を撫でながら手紙を書く約束をする。




翌朝早く目が覚めてしまい降りていくとモリーさんとビルが居た。
挨拶をしてビルの隣に座るとモリーさんが朝食を出してくれる。
トーストを食べていると梟便が届く。
小さな梟はビルから預かっているチェシャー。
不思議の国のアリスからビルが名付けた。
ビルに向かって足を差し出している。
ビルが嬉しそうに手紙を受け取るとチェシャーは鳥籠に飛んでいく。


「届かないかと思ってたんだよ」

「必要な物なの?」

「名前にね」


首を傾げる私にビルが差し出したのは小さなメモ帳。
受け取って開いてみると四角いマスが並んでいた。
ページを捲っても同じようなページばかり。


「それに時間割を書くと良いよ。杖で軽く叩くと科目と教室を教えてくれるから」

「え?」

「行った科目はちゃんと判別してくれるから訳が解らなくなったら使うんだよ」


ビルが使い方を説明するのを聞きながらトーストをかじる。
説明の最後にやはり無理をしないようにとの言葉を貰う。
頷くと頭を撫でてくれてなんだかんだ私は幸せだと思った。
そんな時アーサーさんとチャーリーとパーシーが起きてきて向かい側に座る。
フレッドにジョージ、ロンやジニーも起きてきて一気に賑やかくなった。




ホグワーツ特急に荷物を乗せてホームに戻るとモリーさんに思い切り抱き締められる。
アーサーさんとは握手をしてビルの前に立つ。
去年も思ったけれど、ビルと別れるのは寂しい。


「名前、去年よりも大変だと思うけど頑張るんだよ?」

「ビルからのプレゼントがあるから頑張れるわ」

「手紙書くからね」


くしゃりと頭を撫でてから私の手を握る。
しっかり握り返してちゃんと笑顔を作った。
手を離してロンとジニーを順番に抱き締めると汽笛が鳴る。
モリーさんに急かされて皆で乗り込んで窓際に立つ。
ビル達が小さくなるまで私は手を振り続けた。
不意に抱きつかれて何かと思えばジョージで、フレッドはそんなジョージにくっついている。


「名前、僕等が居るだろ?」

「そうさ。僕等を忘れて貰っちゃ困る」

「お姫様を守るのは騎士の役目さ。なあジョージ」

「ああ、フレッド」


二人の言葉に思わず笑ってしまい、順番に頭を撫でた。




(20120828)
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