次の日目が覚めるとシャロンのベッドは空で、部屋には私一人だった。
時計を見ていつもよりもゆっくりと寝てしまった事に気付く。
朝食は多分もう殆どの生徒が食べ終わってしまっているだろう。
着替えて朝食に向かう為に談話室を抜けて廊下を歩いていると赤毛が目に入る。
「おはよう、チャーリー」
「おはよう、名前。今から朝飯か?」
「そうなの、寝過ぎちゃって」
「お寝坊さんだな」
そう言って笑うチャーリーの手には箒が握られていて、服も見た事のないものだ。
グリフィンドールカラーの服だという事は解る。
ジーッと眺めていると、チャーリーは箒を持ち上げてよく見えるようにしてくれた。
「これはクィディッチのユニフォームだよ」
「クィ…?何、それ?」
私の言葉が衝撃的だったらしく、チャーリーの目は真ん丸になる。
魔法界では常識の事なのだろうか。
マグルの世界では聞いた事もない単語だ。
「名前、詳しく教えてあげたいんだけど僕は今から練習なんだ」
「練習?」
「クィディッチ今昔っていう本を読めば解るよ。それじゃあ」
腕時計を見たチャーリーは大慌てで走って城の外へと消えていった。
それを眺めてから早く行かなければ朝食を食べ損ねる事に気付いて私も慌てて大広間に向かう。
大広間に着けばまだ朝食を食べている生徒がいて安心した。
けれど、皆もう食べ終わりそうな雰囲気でこれは危ない、と慌てて席に座る。
トーストにバターを塗っていると隣にシャロンが座った。
「おはよう名前。ちょっと寝過ぎよ」
「間に合ったから良いのよ」
笑いながらシャロンが注いでくれたオレンジジュースを飲む。
トーストを齧って咀嚼しているとさっきチャーリーの言っていた言葉が聞こえてきた。
シャロンなら知っているかもしれない。
「ねえ、シャロン、あのクィ…なんだっけ」
「クィディッチ?」
「それ」
「そっか。名前は見た事がないのね」
「うん」
頷くとシャロンは私の手からトーストを奪い、さあ行くわよ、と私の手を引っ張った。
何処へ行くのか聞いても答えてはくれず、私は大人しく着いていくだけ。
連れて行かれた先は見た事のある円形の競技場だった。
ただ違うところは両端に丸い何かが立っているところ。
更には競技場の中で箒に乗った生徒が何人も飛んでいる。
その中にチャーリーを見つけて多分これがクィディッチの競技場なのだと思った。
シャロンに引かれるまま観客席に座ると説明を始めてくれる。
「どう?解った?」
「うーん…なんとなく」
「今日は練習だけど、そのうち試合があるわ」
「そうなんだ」
返して貰ったトーストを齧っていたらチャーリーが私に気付いて手を振ってくれた。
(20120622)
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