チャーリー、パーシー、フレッド、ジョージと隠れ穴に来て二日目。
今日はビルが帰ってくるのだと朝からモリーさんがウキウキしている。
私も勿論嬉しいのだけれど、あの手紙を考えると苦い感情が広がっていく。
そんな気持ちを紛らわせる為にパーシーに借りた本を開いていた。


「あ、ビル!」


ジニーの声に頭を上げるとちょうどビルが入ってきたところだった。
モリーさんやジニーと話をしているのを本に隠れながら見る。
久しぶりに見るビルの姿にドキドキしている心臓が煩い。
不意にビルが私を見つけてジニーの頭を撫でてから此方へ歩いてくる。
慌てて本に隠れたけれど絶対に遅い。
その証拠に聞きたかった声が私の名前を呼ぶ。


「名前、久しぶりだね」

「ハイ、ビル」

「ちょっと話があるんだ」


おいで、と言われてしまえばただ後ろを着いていくだけ。
案内されたのはビルの部屋で、前に来た時より物が少なかった。
あの写真立ても今はこの部屋には置いていない。
促されるままにベッドに座るとビルが横に座った。
もしかしたら怒られるのかもしれない、と別の意味でドキドキしてくる。
けれど聞こえてきたのは笑い声で、思わず顔を上げるとビルが笑っていた。


「そんなに緊張しないで。別に怒らないよ」

「本当?」

「僕の手紙のせいで名前が落ち込んでるって手紙が来たんだ。差出人不明でね」


ビルはまだ笑っていて首を傾げた私に一通の手紙を差し出す。
そこには今聞いた内容が書かれていて差出人の名前は無い。
この手紙の字には見覚えがあり、きっとビルには差出人が解っているのだろう。


「僕等家族の事で怒ってくれて有難う」


優しく笑うビルの手が私の頭を撫でる。
嬉しさと安心とで私の頬はきっと緩んでいるだろう。
あの手紙で怒られた事なんてもう気にならない。
ビルが笑ってくれれば私はそれで良いのだ。


「ビル!チェスやろう!あ…名前」


バン!という音と共に現れたのは小さな赤毛。
私を見て眉を下げるロンに笑顔を向けても私とビルを交互に見るだけだった。
ビルを見上げると何か思い付いたように笑っている。


「ロン、名前とチェスをやってみないか?」

「え?私?」

「ロンもなかなか強いよ。ロン、良いだろ?」

「僕は…良いけど」


そのままロンとチェスをやる事になり、強いと言った通りロンは強かった。
いつもあと少しで勝てなくてまるでビルみたい。
悔しいけれど嬉しそうに笑うロンを見てそれでも良いかなぁと思う。


何故かロンは私を苦手としていたようだけれど、少し打ち解けたような気がする。
その証拠にこの手はどうだとかあの手はこうだとかロンは解説を始めた。
偶にビルを見上げては嬉しそうに笑うロンを見るのはとても新鮮。
この後雪崩れ込むように入ってきた双子にからかわれて黙ってしまったけれど。




(20120805)
40
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -