届いた手紙を幸せなわくわくとした気持ちで読み始めたのは数分前の私。
手紙を読み終えた私は落ち込む以外の方法を見い出せないでいた。
ビルの手紙にはクリスマス休暇に会えるという事とこの間のスリザリン生との出来事へのお叱りの言葉が書かれている。
皆が楽しそうにしている中談話室の隅で私は机に突っ伏していた。


「名前、そんなに落ち込まないで」

「ビルに怒られるのは堪えるもの」


先程から私に抱き付いて慰めているシャロンは困ったように笑う。
大丈夫、と手をひらひらさせるとぎゅっと腕に力が込められた。
そしてチャーリーがどうのこうのと言い出したので私は慌てて頭を上げる。


「シャロン、チャーリーは悪くないのよ」

「でも」

「私が悪いの。あんなやつら無視すれば良かったわ」


確かに反省はしているけれど、やっぱり割り切れない。
私自身について言われるのは仕方が無いと思う。
けれど大事な人達について言われるのはどうにも我慢出来ない。
それで怒られてしまうのはなんとも割り切れないものがある。
ふう、と息を吐いて気持ちを切り替えると私は顔を上げた。


「ハイ、名前」

「ハイ、チャーリー。ビルに怒られちゃったわ」

「あ…そうか」


チャーリーは机に置かれている手紙を見てから苦笑いを浮かべる。
大丈夫という意味を込めて笑顔を向けると大きな手が頭を撫でていく。
シャロンは納得しないような顔をしていたけれど、私を見て表情を和らげた。
チャーリーが私の隣に座るのも何も言わないので多分大丈夫だろう。


「ママから手紙が届いたよ。クリスマスに歓迎するって」

「うん、ビルから聞いたわ」

「そっか。でも、名前は良いのか?フレッドとジョージに無理矢理誘われたんだろ?」

「あら、チャーリーなら解る筈だわ。名前はビルと過ごせるから嬉しいのよ」


シャロンの言葉にチャーリーはニヤッと笑ってそうだなと頷く。
二人がビルについて話し出すのには参加せずにこっそり杖を振る。
誰にも言わずに無言呪文の練習をしているけれど上手くいかない。
どうにも今日も上手くいかず、溜息を吐いてビルの手紙を鞄にしまう。


「私部屋に戻るわ」


二人にそう告げて寮への階段を登る。
部屋には誰も居らず、そのままベッドに倒れ込んだ。
ベッドの感触が心地良くていっそこのまま眠ってしまおうかとさえ思う。
特に何も考えずふわふわとする意識は窓を叩く音で引き戻される。
上げる事が億劫な顔をズラす事で見た窓の外に浮かぶのは赤毛。
慌てて窓を開けるとサッと入り込んで箒を壁に立てかけた。


「ジョージ、此処は女子寮なのよ?」

「そうだけど、名前が落ち込んでるって聞いたから」


なんでもないと言うように肩を竦めるジョージは床に座り込む。
壁に立てかけられた箒とジョージを交互に見ながらベッドに座った。
聞きたい事は幾つかあるけれど、なんとなく口を開く事が躊躇われる。
ジョージがいつもよりとても真剣な顔をしているから。


「心配してくれたの?」

「名前はお姫様だからな」

「有難う。でもお姫様ではないわ」

「お姫様さ」


私の隣に座り直したジョージの重みでベッドが音を立てる。
ジョージは何かを取り出して私の前で手を開く。
一度閉じて親指を上にしたと思ったらジョージの手の中には一輪の花。
手を引かれ、その中に花が落とされた。


「名前にあげる。そんなに良い花じゃないけど」

「嬉しいわ。有難うジョージ」


笑顔を向けるとジョージが嬉しそうに笑う。
次々とジョージは手品を見せてくれて、それはシャロンが戻ってくるまで続いた。




(20120805)
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