「ごめんよ、パースと一緒にしてしまって。悪い子じゃないんだけど」


私がかぼちゃスープを飲んでいるとビルがちょっとバツが悪そうな顔をして言うので首を振って否定する。
確かにパーシーの大体の話は私には理解出来なかった。
ビルはまた私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
ドキドキする心を誤魔化す様に私はビルに聞きたかった事を聞こうと口を開く。


「パーシーが、ビルは一番上って言っていたんですけど」

「名前、もっと楽に話して良いよ?」

「あ…うん」

「僕は長男。パースは三男で、君の向かい側に座ってるのが次男のチャーリーだ」


チャーリーは友達と話し込んでいたけれど、ビルに言われて私に挨拶をしてくれた。
ビルと違ってがっしりとしていてとても筋肉質で、背も低いような気がする。
けれど、ビルもチャーリーもパーシーも赤毛というのは同じだった。
チャーリーは監督生だからいつでも頼って良いよと笑ってまた友達との話に夢中になる。


「あと弟が三人と妹が一人だよ」

「七人兄弟?」

「そうだよ」

「凄い!皆似ているの?」

「どうかな…名前の目で確かめてごらん」


そう言って笑ったビルの顔はやっぱり私を虜にするのに充分だった。




沢山のご馳走とビルとの会話は私の満足感を満たすには充分で、ベッドに入ってしまえば直ぐに夢の世界。
翌朝から始まった授業もワクワクする事ばかりで、マグル出身の私でも全く問題の無いものだった。
ただ、魔法史だけは苦手で、頑張ってはいるのだけどどうにも眠くなってしまう。
魔法史の後、廊下で偶然合ったパーシーに寝癖を指摘されてしまった。
同室のシャロン・オルコットとも仲良くなって、入学前に感じていた不安は今は全く無い。
ホグワーツでの生活も大分経ち、慣れて思う事は魔法は凄いという事だった。


いつものようにシャロンと談話室の隅でレポートを広げる。
課題はなるべく早めに終わらせたいのでこの土日を使って終わらせるつもりだった。
と言っても私が残っているのは呪文学のレポートのみだったのでのんびりと教科書を開く。
すると、いきなり影が出来たので振り返るとビルが立っていた。


「ハイ、名前」

「ハイ、ビル」

「課題かい?」

「うん。呪文学よ」

「この呪文は懐かしいな。僕も一年生の時やったよ」


私の文字が書き連ねてある羊皮紙を覗きながらビルが言う。
そして私の隣に座って本を開く。
思わずまじまじと眺めているとそれに気付いたビルが笑う。


「課題で解らない所があったら聞いて」


思わぬ言葉に思い切り頷くとビルはそれを見て微笑んで本を読み始めた。
シャロンは戸惑ったように私を見ていたけれど、決して迷惑ではないようで、笑っている。
後から聞いて知ったのだけど、ビルは主席でとても頭が良い。
それをパーシーに聞いたら呆れられてしまった。
書き上がったレポートを眺めていると横からいつの間にか覗き込んでいたビルがよく出来ていると褒めてくれる。
きっと緩んでいる顔のままシャロンを見ると半分呆れられたような顔をされた。




その夜、私がパジャマに着替えているとシャロンがこっちをジッと見つめているのに気付く。
もしかしてパジャマが裏表逆だっただろうか、と眺めてみてもそんな事は無かった。
首を傾げるとシャロンは此処に座れとばかりに自分のベッドを叩く。
大人しく座ると何かを考えるように視線を彷徨わせてからシャロンは口を開いた。


「ねえ、名前。前から聞こうと思っていたんだけど、貴女ビルが好きなの?」

「好きよ」

「ビルは人気よ?」

「知ってる」


シャロンは何かを続けて言おうとして一度口を閉じる。
ギュッと私の手を両手で握るシャロンの手は暖かい。
多分、一番言いたい事を言おうか悩んでいるのだと思う。


「それに…それにね、私達なんかより随分大人よ?」

「うん、それも知ってる」

「解っているんなら良いの。私は名前を応援する」

「うん。有難うシャロン」


笑いかけた私にシャロンも微笑んで返してくれた。




(20120622)
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