向かい側にチャーリー、両側にフレッドとジョージ。
私の目の前には羽根が一つ置いてある。
そして私は集中して言葉に出さず杖を振った。
けれど羽根はピクリとも動かず相変わらず机の上。


「間違いじゃないのか?」

「まさか!無言呪文だったよ!」

「僕等が見間違えるはずないさ!」

「名前は覚えてないんだな?」

「気付いたら、気絶してたの」


チャーリーは何か考え始め、フレッドとジョージは私に抱き付く。
確かに私はあの時呪文を唱えた覚えは無い。
失神呪文は知っていたけれど使ったのも初めて。


「まあ、名前に素質があるって事は解ったし、練習してるんだろ?」

「うん」

「じゃあ出来ても不思議じゃないな」

「僕等のお姫様はやっぱり凄い!」


チャーリーは騒ぎ出した二人にレポートをやれと言って立ち上がった。
レポートという言葉に二人は顔を歪ませる。
そんな二人の顔に思わず吹き出すと両側から頬をつつかれた。


「レポートやるなら手伝うわよ」

「名前が手伝ってくれるなら頑張る」

「教科書持ってくるから待ってて」


フレッドが私の頬にキスをして階段を登っていくのをジョージが騒ぎながら追いかけていく。
戻ってきた二人はどっさり教科書を抱えていた。
どれだけ溜めるとこうなるのだろうと言いたくなる量。
とりあえず一通り目を通して期限が近い物を二人の前に並べて差し出す。


「名前、僕等頭が爆発しそうだよ」

「勉強した位で爆発しないわフレッド」

「ねえ名前、僕等がちゃんと課題を終わらせたらご褒美が欲しい」

「良いぞジョージ!」


二人は動かしていた手を止めてキラキラとした目で此方を見つめている。
ご褒美と言われてもどうすれば良いのだろう。


「簡単な話さ。クリスマス休暇家に来て」

「そして僕等とクリスマスを過ごすのさ」

「まあ!それは嬉しいけど、モリーさんは許してくれるかしら」


声を揃えて大丈夫!と言う二人に頷けば二人はレポートに向かい合った。
時々口を出したけれど二人はやる気になれば出来る事が解る。
お陰で私はビルの事を考える時間が出来た。
もしかしたらクリスマス休暇に会えるかもしれない。
考えるだけで緩みそうになる顔を隠そうと俯くと軽く服を引っ張られた。
服を引っ張ったのはまたジョージでジッと私を見つめている。
首を傾げるとジョージは笑みを浮かべてレポートに目を戻した。


ジョージが不思議な行動を取るのは本当に一瞬で、直ぐに元に戻る。
特別に何を言う訳でもなく私を見つめるだけ。
雰囲気が変わってそれは少しビルを思い出させる。
不意にジョージが顔を上げていつもの顔で笑う。


「名前、終わったよ」

「あ、うん」

「僕も終わったよ。これで名前はクリスマス休暇は僕等と過ごすんだ」


ニッコリ笑う二人は嬉しそうに私に抱きつく。




(20120728)
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