ハロウィンの朝、やっぱり甘い香りが漂ってきていて私は去年より沢山お菓子を用意した。
朝一番起き抜けにシャロンから始まって出会う人皆に声をかけられる。
何故か顔を真っ赤にした一年生が声をかけてきた時はフレッドとジョージが割り込んできた。
やっと波が去っていって一人で廊下を歩いていると前を歩く赤毛。
「パーシー」
「あぁ、名前」
「パーシー、トリック・オア・トリート」
私がにっこり笑ったのに対してパーシーは不思議そうな顔をする。
その顔が面白くて思わず吹き出してしまう。
元々パーシーに悪戯をするつもりは無いので冗談だと伝えようとするとパーシーはお菓子を差し出していた。
驚きながらそれを受け取るとピンク色のリボンが巻かれている。
「名前も絶対言うだろうと思ったから予め用意しておいたんだ」
「有難うパーシー」
嬉しくて思わず抱きつくとパーシーは困ったような声を出した。
思わず笑ってしまって、パーシーの顔は真っ赤になる。
図書館に行くというので並んで歩きながら話すのは授業の事やレポートの事。
「パーシーは野心家ね」
「勿論さ。まずは魔法省に入れるように頑張らなければ」
「やっぱり魔法省なのね」
勿論!と瞳を輝かせて今度は魔法省の話になった。
魔法省かぁ、とぼんやり考えて思い出すのはビルの事。
魔法省に就職出来る充分な成績だと先生が言っていた。
「ビルは何故魔法省に入らなかったんだろう」
「エジプトでの仕事に興味を持ったんじゃないかしら?呪い破りよね?」
「僕は勿体無いと思うよ」
パーシーの言葉に曖昧に頷いて図書館の前で別れる。
私はビルが目標だけれど、就職の事までは考えていない。
魔法使いの就職先は今度ビルに会ったら聞いてみよう。
「名前?また図書館か?」
「ハイ、チャーリー。パーシーに付き合って此処まで来ただけなの」
「あぁ、そうか」
ふわっと笑ったチャーリーはなんだかビルを思い出させる。
去年と変わらないような気がしていたけれどチャーリーも変わっていたみたいだ。
私だって去年よりもチャーリーとの目線が近い。
鞄の中のキャンディーを思い出してチャーリーに一つ差し出す。
「俺まだ何も言ってないぞ」
「知ってるわ。だから、お菓子あげるから悪戯しないでね」
「なんだそれ」
ははは、と笑うチャーリーはお礼を言ってキャンディーを受け取った。
大分沢山用意したのでまだまだキャンディーに余裕がある。
ハロウィンに因んでパンプキン味のキャンディー。
「フレッドとジョージには会ったか?」
「まだ。会うのがちょっと恐いわ」
「気を付けろよ?まあ、名前には悪戯しないと思うけどな」
「どうして?」
「我らがお兄様は怒ると恐いのさ」
ウインクをしたチャーリーの言葉を噛み砕けばビルに辿り着く。
あっという間に緩んだ顔を見たチャーリーはぐしゃぐしゃと頭を撫でる。
(20120728)
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