心底下らない、それが私の出した結論だった。
何冊も読んだけれど純血が尊いだなんて思わない。
純血の血そのものが優れているというのならばそれは一部だろう。
スリザリンの生徒を見ていても優れている人は一部だ。
知識を詰め込んだ私は本を机に積んで代わりに教科書を開く。
変身術と天文学のレポートを仕上げなければならない。
人気の無い談話室は集中出来る私のお気に入りの一つ。
何より、去年ビルがよく勉強を見てくれたのも同じように人気の無い談話室だった。
レポートを書く手をふと止めるとブックマーカーが目に入る。
読みかけの本が無い時はいつも教科書に挟んであった。
見る度にビルを思い出して、そして会いたくなってしまう。
大きく息を吐いて気持ちを切り替えた時、談話室の扉が開いて赤毛が二つ覗く。
四つの目が私を捉えてパッと輝いた。
そして、口を開いたのはフレッド。
「名前!まさか僕等の帰りを待ってた?」
「違うわ。課題をやってたの」
「待っててくれたなら嬉しかったのに。なあジョージ」
「そうだなフレッド」
ニヤニヤ笑いながら私を挟んで座る二人はレポートを覗き込む。
真剣に読んでいるように見えたので私はレポートを再開する。
眺めているのなら二人も課題をやれば良いのに。
そう思ったけれど、きっと二人はやらないだろう。
杖を振ってインクを乾かしてレポートを丸めていると二人の頭が肩に乗った。
「フレッド?ジョージ?」
声をかけても答えが無く交互に見るとその瞳は閉じられている。
どうしようかなぁと思いながらも私は本を開く。
寮の外に居る訳では無いし。
「名前」
かなり本を読み進めた時不意に左側から声がした。
その目はしっかりと開かれていて、どうやら少し前から起きていたらしい。
もぞもぞと動いて私に寄りかかり直して、額が肩に乗せられる。
「ジョージ?」
「ん?」
「眠いのなら部屋に戻る?」
「んー」
「フレッドなら起こすわよ」
「んー」
曖昧な返事を繰り返すジョージは私の腰に回した腕に力を込めた。
この間といい、いつもと違う雰囲気のジョージに私はどうすれば良いのだろう。
フレッドがまだ眠っているので大きく動かせない手でジョージの腕を軽く叩く。
ポンポン、と宥めるように感じてくれていれば良いのだけど。
チャーリーがよく私にしてくれるように。
「部屋に戻るよ」
「うん。フレッドはどうする?」
「僕が引き摺ってく。名前も戻りなよ」
頷くとジョージは頭を上げて私をジッと見つめる。
近くでじっくり見る真剣な顔のジョージはとても珍しい。
不意に笑ったジョージの顔はいつものニヤニヤと違ってとても優しい顔。
その顔に驚いているとジョージはさっとフレッドを引き剥がす。
「じゃあね、名前。おやすみ」
「おやすみなさい」
階段を登っていくジョージに手を振る。
引き摺られているフレッドの足がとても痛そうだった。
(20120726)
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