目当ての本を探して棚を歩いていると高い位置に目当ての本を見つけた。
試しに手を伸ばしてみたけれどやっぱり届く訳もない。
仕方ないなぁと杖を出したけれどその前に手が伸びてきた。
「これか?」
「そう。有難うチャーリー」
「どう致しまして」
チャーリーも同じように何冊か本を抱えていて私に一冊渡しても量は変わらないように見える。
私の持っている本のタイトルをザッと見て眉を寄せた。
私の腕の中には今取って貰った本と似たようなものばかり。
多分、チャーリーはこんな本ばかりと言うだろう。
「名前、こんな本ばっかりどうするんだ?」
やっぱり、と思って肩を竦めて後ろを指差す。
ちょうど近くをマダム・ピンスが厳しい顔で歩いていた。
私の手の中にある本は純血に関するものばかり。
きっとチャーリーは心配をしているのだと思う。
手にある本を全て借りて図書館を出る時もチャーリーは渋い顔をしていた。
鞄にしまうとその分の重みが増えて肩に食い込む。
「純血主義になるつもりはないわよ?」
「それは…でも、その本は?」
「私、魔法界の事を知りたいと思ったの。まだ知らない事が沢山あるわ。ビルとチャーリーに守って貰ってばっかりじゃ駄目だもの」
チャーリーは何かを考えているようで視線がうろうろしている。
きっと優しいチャーリーはいつでも守ってやると言うだろう。
口を開く前にそれに、と私は言葉を繋げる。
「穢れた血が劣ると差別するなら、私は勉強を頑張って勝ってみせるわ。ビルとは夏休みに話をしたの」
「…無理すんなよ」
言いたい事を飲み込んだように見えるチャーリーは私の頭を撫でた。
お礼を告げると優しく笑ってくれる。
チャーリーはいつでも優しい。
ビルとは違うけれど、私はチャーリーが大好きだ。
並んで歩き出したところで慌ただしく誰かが走ってくる音と声。
「名前!チャーリーも!」
「此処は危険だ!フィルチが来る!」
ぐい、と腕を引かれそのまま走り出す。
チャーリーも同じらしく隣を走っているのが見える。
暫く併走していたけれどチャーリー達が曲がり角で消え、私達は空き教室に入り込む。
息を整えていると外を確認し終わったらしく伸びてきた手が背中を撫でる。
顔を見れば心配そうな表情を浮かべた垂れ目と目が合う。
「ジョージ、何したの?」
「ちょっとした悪戯だよ。それより大丈夫?」
「大丈夫だけど、私まで逃げなくても良かったじゃない」
「でも、おかげで名前と二人きりだ」
そう言ってジョージは満面の笑みを浮かべる。
身構えたけれど予想に反してジョージは何もしない。
いつもならフレッドと一緒に抱きついてくるのに。
再び廊下を確認して手招きをするので横に並んでも大人しい。
「フィルチに見つからないうちに帰ろう」
「私は見つかっても平気よ」
「僕は困るよ」
くすくす笑うジョージはやっぱり少しだけいつもと違って見えた。
(20120726)
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