「入るなら早く入ってくれないか?」


ビルの事で頭がいっぱいの私に冷静な声がかかる。
それに私はハッとなって声のした方を向くとパースと呼ばれた男の子が眉を寄せていた。
失礼します、と小声で言って向かい側に座る。


「あの、名前・名字です」

「知ってる。僕はパーシー・ウィーズリーだ。新入生かい?」

「はい」


そう、と言って彼は再び本に目を戻す。
邪魔になってしまうのだろうか。
けれど彼に幾つか聞きたい事があった。
もしかしたら急にビルに連れてこられた私が面倒で本を読んでいる方が楽しいのかもしれない。
でも、と私は自分を奮い立たせて息を吸う。


「あの、パーシー?」

「何だい?」

「ビルとは、兄弟なんですか?」


パーシーは本を閉じて膝の上に置いた。
無視されなかった事にホッとする。
私の疑問にパーシーは頷く事で答えて口を開いた。


「そんなに畏まらなくても良い。僕は二年生だ。君とは一つしか変わらない」

「…うん。ビルとは、大分離れているのね」

「ビルは、一番上のお兄さんなんだ」

「そうなの?」

「あぁ、僕は三男。ホグワーツに着けば、解るだろう」


私は兄弟の話をここで辞めようと話題を変える。
ホグワーツでビルに聞けば良いし、それになんだかパーシーは聞いて欲しくない様な気がした。
授業の事を聞いていたらパーシーはやたらと課題の事を口にする。
夏休みの間に出た課題の話や、一年生の時の話。
魔法界に馴染みのない言葉が沢山出てきて正直右から左へ流すしかなかった。






ホグワーツに着けばイッチ年生と言う言葉や、湖を渡るボート、更には喋る帽子などとにかく驚いてばかり。
なんというか、ありきたりな感想だけれど、魔法って凄い。
グリフィンドールと宣言された私は賑やかなテーブルへと走っていく。
するとビルが笑顔で手招きをしてくれて迷う事無く私はビルの隣に座った。


「やあ、名前。一緒の寮で嬉しいよ」


そう言ったビルに返事をしようとしたけれど、校長先生のお話が始まってしまう。
長いんだろうな、と思っていた私の考えを良い方向に裏切ってかなり短かった。
呆気に取られていると私の向かい側に座っている赤毛の男性がいつもの事だと教えてくれる。
そしていつの間にか目の前のお皿には沢山の料理が並んでいて私はまた呆気に取られてしまった。




(20120620)
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