そわそわと私は自分の部屋をうろうろしていた。
荷造りは済んでいて、出ているものと言えばビルからの手紙。
私は夏休み最後の二週間をウィーズリー家で過ごす事になった。
ビルの手紙で日付を確認して私はまた部屋をうろうろする。


チャイムの音がして続いて私を呼ぶ声がした。
私は慌てて階段を降りていくと、お母さんとビルが並んでいる。
私を見るとビルは片手を上げて笑う。
お母さんに挨拶をするビルはなんだか不思議なものに見えた。


やっとの事でトランクを持ってくるとすかさずビルが持ってくれる。
お母さんに見送られながら暫く歩く。
見渡しても車は無くて、ビルを見上げる。


「ビル、どうやって移動するの?」

「姿くらましするのさ。手をどうぞ」


記憶を探って姿くらましの事を思い出す。
確か凄く難しい魔法だった。
何れ自分も学ぶ事になるのだけど。
差し出されたビルの手に自分の手を重ねるとバチンと音がして気が付けば私は見知らぬ場所に立っていた。
姿くらましはあまり心地良くなくて、少しフラフラする。


「大丈夫?暖炉は使えないし、これが一番早くてね」

「大丈夫。きっと初めてだったから」


深呼吸をして笑いかけると繋がったままだった手に力が入った。
気にしないようにと辺りを見渡すと一軒の家が見える。
果樹園に鶏小屋、牧場もあって家は不思議な形をしていた。
繋がった手を引かれるままに歩きながら庭に小さな何かが居るのに気付く。
あれはなんだろうと思っているとビルが庭小人だと教えてくれた。


「ただいま」

「お帰りなさい。ビル」


玄関から入って直ぐキッチンで、赤毛の女性がビルを迎える。
ビルからの手紙で予め教えて貰っていたので直ぐに誰か解った。


「名前・名字です。お世話になります」

「貴女が名前ね?貴女が来るのを待っていたのよ。よく来たわね」


モリーさんは私もぎゅっと抱き締めてにっこり笑う。
キッチンには他に誰も居なかった。
時計が目について覗き込むと数字の代わりに文字が書いてあり、針は九本ある。
鍋が勝手に洗われていたり編み針が勝手に動いていたり。
私の家とは違う事ばかりでとても見るのが楽しい。


「名前、部屋に案内するよ」


ビルに呼ばれた方へ行くとトランクはいつの間にか消えていた。
後ろをついて階段を上っていると外見通り上に長い家だという事が解る。
ある部屋の前でビルが止まり、ノックをすると中から女の子の声がした。
出てきたのは長い赤毛の小さい女の子。
直ぐに一番下の妹のジニーだと解った。
ジニーは私を見るとパッと顔を輝かせて笑う。


「妹のジニーだよ」

「名前、私貴女に会うの楽しみだったの!」


そう言って笑うジニーはとても可愛くて抱き締めたくなる。
その時モリーさんのジニーを呼ぶ声がしてまた後でと言って階段を降りていった。
すると何処かの部屋の扉が開く音がして顔が覗く。
赤毛に眼鏡のパーシーだった。


「ハイ、パーシー」

「やあ名前!来たのか!本を幾つか用意してあるからまた後で来て欲しいんだ」


頷くと満足そうに頷いて部屋へと引っ込む。
パーシーの部屋の位置を覚えて窓から外を見ているビルの視線を追う。
果樹園の近くに四人の人影があり、そのうちの一人はよく見知った人。
うち二人は手紙で聞いた以上にそっくりな二人。


「行こうか」


ビルの言葉に頷いて階段を降りる。




(20120718)
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