朝、チャーリーに言われるままに最後のビルの制服姿だと二人で写真を撮って慌ただしく馬車に乗った。
ホグワーツ特急ではビル、チャーリー、パーシー、シャロンと皆で一つのコンパートメントに乗り込む。
パーシーだけが本を読んでいる中、シャロンとチャーリーはクィディッチトーナメントについて語っていた。
それを聞きながら私とビルはチェスをしている。
相変わらずビルは手加減してくれず、私は勝てないまま。
「これじゃあ約束はまだまだお預けだね」
くすくす笑うビルに私は驚いて彼を見る。
約束を覚えてくれていた事が嬉しくて顔が緩む。
そんな私にパーシーは負けたのに笑ってるなんて、と呟いた。
けれどそんな事は気にならずまたチェスを再開する。
汽車が大分走ったところでシャロンがいきなり立ち上がった。
三人に独り占めの時間よ!なんて言って私の腕を引く。
くすくす笑うビルとチャーリー、我関せずなパーシーに手を振ってシャロンの後を追う。
比較的近くの空いているコンパートメントに入り、向かい合って座った。
「名前、昨日の夜何処へ行っていたの?」
「起きてたの?」
「一度目が覚めたの」
その時に私の姿が無い事に気付いたらしい。
私は暫く昨夜の事を思い出してシャロンの手を握る。
シャロンはとても大事な友達だけれど、これはまだ私だけの宝物にしようと思った。
シャロンは私の手を握り返していつか見せた複雑な表情を浮かべる。
「ビルと、会ってたのね?」
「うん」
「名前は、ビルを好きで幸せなのよね?」
確認するように言うシャロンに頷くと思い切り抱き締められた。
私もシャロンの背中に腕を回す。
「夏休み、名前と離れるなんて寂しいわ。ビルなんかにはあげないんだから」
くすくすと笑いながら言うシャロンと顔を見合わせて笑う。
散々二人で話して、三人の待つコンパートメントに戻るとあっという間に私はビルの隣になっていた。
汽車を降りるとホームではあちこちから再会を喜ぶ声が聞こえてくる。
シャロンとさよならを言ってマグルの世界へ四人で戻ると遠くに赤毛の家族が見えた。
きっとウィーズリー家の人達なのだろう。
「名前、手紙を送るよ」
「夏休み待ってるぜ」
ビルとチャーリーに交互に頭を撫でられる。
パーシーは本を選んでおく、と言って握手をした。
そこで三人にお別れを告げて私は歩き出す。
三人の声が遠ざかっていくのを聞きながら不意に寂しくなった。
ビルとチャーリーとパーシーと過ごしていた日々が終わる。
何より、もうホグワーツでビルに会えない。
思わず立ち止まって振り向くとすぐ近くにビルが立っていた。
「夏休み、僕が迎えに行くから待ってて」
私が頷いたのを確認したビルは慌ただしくお別れを言って戻っていく。
その背中を眺めてから私は軽くなった心と歩き出した。
(20120712)
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